北京の科学と技術
中国のシリコンバレーへの回答
北京はいかにして世界のハイテク大国へと急変貌を遂げているのでしょうか。
北京は、イノベーション・エコシステム・ランキングの最上位にしばしば登場します。同市は、世界最大級のスタートアップ企業の集積地であり、ハイテク企業のユニコーンが数多く輩出されています(2019年初頭には63社に達しました)。しかし、いくつかの指標では、中国の首都は他の都市の活動レベルにまだ及ばず、まだ「新進気鋭」のイノベーション・ホットスポットに留まっていると考えるべきであることを示唆しています。例えば、新興ハイテク企業のベンチャーキャピタル(VC)による資金提供を見ると、2015年~2017年(入手可能な最新の実績データ)における取引数は、エコノミスト・インテリジェンス・ユニットが調査した他の拠点に比べて少なかったのです。しかし、これらの取引の累積金額はかなり大きかったと言えます。
北京の新しいテクノロジーの強みは、人工知能(AI)と先進製造業という補完的な分野にあることがわかりました。これらの分野は、中央政府が野心的な戦略計画「Made in China 2025」で開発を加速する対象としている技術領域であり、北京市人民政府はさまざまな方法で北京での開発に力を入れています。北京には、すでに1,000社を超えるAI専門企業があります。
中国国内の経済成長の鈍化や米中貿易摩擦の激化などにより、近年、中国の都市部における技術系スタートアップ企業の活動が冷え込んでいると言われています。貿易摩擦と、特に中国のテクノロジー分野への逆風は、短期的には世界の投資家に対する北京の魅力を低下させるかもしれませんが、AIや高度な製造業、その他の先端技術におけるイノベーションを発展させ、商業化するという国家的な推進力が衰えることはないでしょう。
コミュニティとネットワーク
北京の技術革新者たちは、欧米の他の都市と同様に、地元の仲間とアイデアやアドバイスを交換することを大切にしています。欧米では、このような活動の場として、組織的なコミュニティ・イベントやミーティングが盛んに行われていますが、北京では(中国の他の都市と同様に)、ピアネットワーキング(同僚や他社の仲間との集まり)の多くは、よりインフォーマルな社会環境や、ソーシャルメディア・プラットフォームのWeChatで行われる傾向があります。それでも、人気の高いコミュニティ・プラットフォームのMeetupでは、AIや機械学習、3Dプリントなどの製造業、ブロックチェーンなど、さまざまな技術テーマの専門家を集めたグループが、現在北京市内に約130あります。
新興企業の成長と企業の研究開発の両面において、北京の技術革新活動の中心となっているのが、市の北西部に位置する中関村サイエンスパークです。この地区には、Innovation Works社、Legend Star社、Tsinghua University Science Park(清華大学サイエンスパーク)、Microsoft Acceleratorの北京拠点(AIに特化)など、北京で最も著名なテクノロジー・アクセラレーターやインキュベーターがあります。北京市人民政府は、21億米ドルを投じて中関村にAI開発センターを建設することを計画しています。これは、今後10年間で中国を世界有数のAI大国に躍進させるという中央政府の目標の一環です。このセンターには、最大400社のAIスタートアップ企業が入居する予定です。
サポート環境
世界的なイノベーション拠点の特徴は、先端技術分野で優れた学術・研究実績を持つ大学が複数存在することです。北京も例外ではなく、全体で91の大学を擁しています。その中には、最近、AIの研究機関やブロックチェーンの研究奨学金プログラムを設立した清華大学、材料科学やナノテクノロジーなどの分野で学位コースを提供する名門の工学院がある北京大学、航空宇宙・材料科学・産業オートメーションなどの高度な製造分野で学生を育成し、独創的かつ応用的な研究を行っている北京航空航天大学などがあります。
ハイテク研究が盛んなことは、首都の長期的なイノベーションの見通しに有利に働きます。2007年は海外で学位を取得した学生のうち3分の1程度だった帰国者の割合が、80%まで伸びていることも、中国が若い才能にとって魅力的な場所であり、北京などの都市がシリコンバレーと対等に競争していることを示しています。台頭する中国のテクノロジーシーンは、成熟と優勢の段階に達しつつあります。
エコノミスト・インテリジェンス・ユニット著
本ページは2021年6月にピクテ・アセット・マネジメントが作成した記事をピクテ・ジャパン株式会社が翻訳・編集したものです。
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