Interview 4
吉田志穂
Shiho Yoshida
第2回Prix Pictet Japan Award(2017)
ファイナリスト
Artist Interview
2011年3月 東日本大震災
石の宝殿
石の宝殿
この作品を制作し始めたきっかけは、インターネット等いろいろなメディアによって、その恩恵を受けていると同時に何もかもが簡単にわかってしまう、わかったような気にさせられてしまう、謎が謎のままであることや不確定なものが許容されにくくなっているようなことを感じていた時に作品のモチーフになった石のことを知ったことです。
オカルトサイトのようなものを見ている時に、浮いているように見える謎の巨石があると紹介されていてずっと気になっていました。形の独自性などの造形的な興味はもちろん、なぜその石ができたのか、いつ作られたものなのか、事実や史実が明確に記録されておらず曖昧な記録しか残っていないことにも惹かれ様々な資料をまとめてから現地に行きました。
「石の宝殿」と呼ばれている兵庫県の高砂市にある石で、実際に行ってみると石の周りはお社に囲われていて、資料などから想像していた景色とは異なるスケール感の場所でした。石自体はすごく大きいものでしたが建物に囲われていることもあって距離をとって見ることもできませんでした。全体的に見る事ができない、明らかでない、写真に写しきれないところもまた気になりました。
現地で撮影をしたり詳細を調べていくうちに地元に長く住む石工さんや、石の加工場の方などとお会いして話を聞ける機会がありました。石が実際に作られていた時代にどの場所でどんな作業が行われていたのかを想像して説明してもらったことや、近くの博物館で行われていた採掘された土器などの破片をつなぎ合わせて何か新しいもの、新しいものというか過去の形を想像して修復していくプロセスなどを見て、自分もこの石に対してアプローチした作品を作りたいと思いました。
©︎Shiho Yoshida Quarry / ある石の話
口伝、信仰をテーマに
次のテーマは明確には決まっていないのですが、今回の石をテーマにした撮影とリサーチを経て自分の中で初めて口伝の面白さというか、人が人に伝える民間神話や信仰みたいなものに触れ、なにか信仰のような概念をテーマにすることに興味を持っています。インターネットで調べても資料が存在しないようなレベルの現地でしか継承されなかったような話に惹かれました。
調べても簡単には出てこないような、今何らかの形で残さないと絶対にアーカイブされないような話も多くありますので、あえてそういう物を写真にして作品化できたら新しい情報の残しかたとして面白いものが作れるのではないかと思っています。
今回の作品は、ある石とそれにまつわるものというモチーフですが過去の作品では数年前に座礁し海岸に埋められ実際に見ることのできない鯨や、当時撮りためていた山の写真が膨大な量蓄積していった結果例えば、ハードディクスクの中の画像たちを架空の山として考えた時にどのようにそれを撮影するのかといったテーマもありました。
実際の物質として存在しているものも、もうすでに無くなってしまったものでも、概念だったりそういった物をどう写真のイメージに落とし込むかを考えて制作しています。写真だからこそできる方法で形にして行きたいと思います。
2018年12月12日
代官山 ヒルサイドフォーラムにてインタビュー