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新型コロナウイルスアップデート
市川 眞一
2020/06/23

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概要

日本国内における新型コロナウイルスは、取り敢えず感染第1波が収束に向かっている模様だ。ただし、東京都において新たに確認された感染者が日々2桁に達するなど、今後、経済活動が正常化して行く過程で第2波への懸念は強い。一方、世界の感染者は増加基調が続いている。一時極めて厳しい状況にあった欧州の感染は一段落だが、国家間の人の移動解禁が及ぼす影響が注目されよう。新興国・途上国は1日10万人近い感染者が新たに確認されており、急速に新型コロナウイルスが拡大しつつある。特に懸念されるのはブラジル、インドだが、経済活動を優先する政府が適切な手を打っていないことも不安材料だ。米国については、ニューヨーク州での感染は収束しつつあるものの、カリフォルニア、テキサス、フロリダ、アリゾナなどで感染者が急増している。これらの州は経済規模が大きく、再び経済活動の厳しい制約を要する事態になれば、米国全体への打撃が大きくなる可能性は否定できない。以上、世界各地の状況を見ると、新型コロナウイルス禍は完全な収束には程遠いようだ。当面、マーケットにおいては、財政・金融政策と感染拡大の綱引きが続くだろう。



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新型コロナウイルスは、感染が世界に拡大する一方で、国・地域によって感染の状況に大きな差が生じている。それは、自然環境、経済・社会の構造や政府の取り組み、そして公衆衛生インフラや医療制度などに根差したものだろう。これから懸念されるのは、新興国・途上国及び米国の南部及び西部である。感染者が急拡大しており、収束のメドが立っていないからだ。

 

 

日本における新型コロナウイルスの感染は、4月中下旬がピークであり、第1波は全国的に収束しつつある。政府は、5月9日に39県、21日に関西の2府1県、そして同25日に関東の1都3県及び北海道の非常事態宣言を解除、6月19日には県境を越える移動も解禁した。これからは経済活動再開の影響を見極める局面に入る。

 

 

東京都は、5月上旬を底に新たに確認される感染者が漸増傾向にある。ただし、4月との大きな違いは、多くの感染者の感染ルートが確認てきていることだ。また、5月6日に2,974人に達した入院患者数は、足下、200人程度へ減少した。医療現場の安定による十分な医療サービスの供給が、死者数減少の一因ではないか。

 

 

世界全体で見ると、5月中旬以降、新型コロナウイルスの新たに確認された感染数は再び増加局面をたどっている。米国国立アレルギー・感染症研究所のアンソニー・ファウチ所長は、6月17日、米国がまだ感染第1波のなかにあると指摘した。統計データを見る限り、世界も引き続き感染第1波の最中にあると考えるべきだろう。

 

 

欧州において最も早く新型コロナウイルス禍が深刻化したイタリア、スペインでは、3月下旬をピークに感染は収束した。島国である英国は、4月中旬に感染のピークを迎えたが、こちらも既に落ち着いている。ただし、EU域内については、国境を越える移動の制限が段階的に緩和されつつあるため、今後はその影響が注目されよう。

 

 

現在、新型コロナウイルスの感染が最も深刻なのは、新興国・途上国である。医療体制や公衆衛生インフラが脆弱な上、貧富の格差が大きいため、感染拡大期に入ると先進国以上に抑制が難しいのではないか。先進国が治療薬・ワクチンの提供を怠ると、新興国・途上国が次の感染拡大の震源になる可能性は否定できない。

 

 

新興国で新型コロナウイルスの感染が最も深刻な状況にあるのがブラジルだ。ジャイール・ボルソナロ大統領は経済最優先の姿勢を堅持、都市封鎖などの対策を講じていない。また、インドの感染者の増加が加速している。しかし、6月8日から都市封鎖の段階的解除を開始した。この2ヶ国は、世界の感染第2波の震源地となる可能性がある。

 

 

新興国・途上国と並び懸念されるのは米国の状況だ。一時は医療崩壊に陥ったニューヨークの感染は収束したものの、米国全体で見ると、新たに確認された感染者数は引き続き高水準となっている。都市封鎖が段階的に解除され、経済活動が再開しており、感染が再び拡大期に入る可能性は否定できない状況だ。

 

 

米国において特に注目されるのは、カリフォルニア、テキサス、フロリダ、アリゾナなどの南部、西部主要州である。リック・サントラム知事の下、感染第1波では逸早く州境を封鎖して感染拡大を抑止したカルフォルニアでも、新たに確認される感染者が急増している。経済活動の再開により、感染が拡大しつつある可能性は否定できない。

 

 

2019年の米国のGDPを州別に見ると、トップはカリフォルニアの14.6%、それに次ぐのがテキサスの8.8%、4番目がフロリダの5.1%である。つまり、新型コロナウイルスの感染が拡大している3州は、米国経済の28.5%を占める主要州に他ならない。アリゾナを含めれば30.2%だ。これらの州で再び経済規制が強化されれば、米国全体への影響は極めて大きいだろう。

 

 

新型コロナウイルスは、日本国内では取り敢えず収束しつつあるものの、世界的には感染が拡大している。感染症の状況が経済を大きく左右するため、ファンダメンタルズ分析が機能に難く、経済・市場へのインパクトを想定するのは非常に難しい。従って、当面のマーケットは、感染の状況と各国の財政・金融政策の綱引きになるだろう。ニュースフローが市場を支配するため、ボラティリティは高止まりし、値動きの激しい展開が続くと予想される。


市川 眞一
ピクテ・ジャパン株式会社
シニア・フェロー

日系証券の系列投信会社でファンドマネージャーなどを経て、1994年以降、フランス系、スイス系2つの証券にてストラテジスト。この間、内閣官房構造改革特区評価委員、規制・制度改革推進委員会委員、行政刷新会議事業仕分け評価者など公職を多数歴任。著書に『政策論争のデタラメ』、『中国のジレンマ 日米のリスク』(いずれも新潮社)、『あなたはアベノミクスで幸せになれるか?』(日本経済新聞出版社)など。


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