ブースト・アップ

シニア・フェロー市川眞一が政治や経済情勢を独自の視点で分析します。

2月17日

「トランプ関税」の問題点

米国のドナルド・トランプ大統領が就任してから4週間が経過した。短い期間に大統領令を多発して数々の政策を打ち出し、連邦議会を軽視しているようにも見える。しかしながら、現時点で同大統領を止める強い政治的な動きは見受けられない。特に注力しているのが、関税による対外的な圧力の強化だ。通商関連のみならず、外交や領土問題にも関税が交渉の武器となった。もっとも、米国は自らの生産力を上回る消費により世界に需要を創出、ドルを基軸通貨化させることで国際社会において大きな影響力を行使してきた。つまり、貿易赤字は米国の強さを反映しており、弱さを象徴しているわけではない。また、関税は輸入国の事業者が納税義務者である。関税率を引き上げれば、最終的には消費者が負担することになるだろう。つまり、関税率の大幅な引き上げは新たな連邦間接税を導入したに等しい。結果として、米国内において物価上昇圧力が高まると想定される。関税を武器にした対外交渉は、米国のインフレを加速させることになるのではないか。