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- 米国大統領選挙アップデート③
米国大統領選挙における6月27日の第1回候補者討論会は、ジョー・バイデン大統領にとって厳しいものとなった。ドナルド・トランプ前大統領の挑発に乗り、現職としての品位や威厳を示すことができなかった上、質問に対する答えに詰まり、声が明瞭でない時間もあり、高齢問題への懸念が広がったからだ。報道各社の世論調査を見ると、討論会を機にバイデン大統領の支持率は下降している。ただし、これでトランプ前大統領が優位に立ったと考えるのは早計ではないか。11月5日の本選までまだ4ヶ月を残し、9月10日には第2回の討論会が予定されている。さらに、共和党、民主党は全国大会の開催前であり、候補者の正式な指名は終えていない。民主党内には、バイデン大統領の出馬辞退を前提として、新たな候補の擁立を模索する動きもあるようだ。討論会でのトランプ前大統領のパフォーマンスも良かったとは言えないだけに、今回の大統領選挙は多くの不確定要因を残している。現段階において、どちらの陣営が有利になったのかを判断するのは困難だろう。
■ 支持率は不支持率を15%ポイント以上下回る
ABC系のニュースサイトであるファイブサーティエイトの集計によれば、主要世論調査において、バイデン大統領の仕事ぶりを「支持する」との回答者は40%を切っており、不支持率を15%ポイント以上下回る状態が続いている。経済は順調に推移、インフレ圧力は緩和されつつあるものの、高齢問題に加え、不法入国者の急増、ウクライナ支援、パレスチナ問題への対応に関し、有権者の不満が強いようだ。
■ バイデン大統領の支持率は再選されたどの大統領の同時期より厳しい状況
7月3日でバイデン大統領は就任から1,261日となったが、同じ条件で比較できる戦後の9名の大統領の同時期と比べた場合、再選された6名は何れも支持率が45%以上を維持していた。一方、再選に失敗したジミー・カーター、ジョージ・H・W・ブッシュ、ドナルド・トランプの3大統領の場合、この時期の平均は36.7%だ。足下のバイデン大統領の支持率は37.1%なので、この3名と概ね同水準と言えるだろう。
■ ロバート・ケネディJrなど独立系候補は選挙結果に影響を及ぼす可能性
大統領選挙に関する世論調査の集計では、7月3日現在、バイデン大統領への支持が39.8%、トランプ前大統領は42.1%、無所属のロバート・ケネディJr.氏が9.7%だった。二大政党の現職、前職が共に勝利への決め手を欠くなかで、ケネディJr.など無所属候補の得票が、今回の大統領選挙において勝敗を左右する可能性は否定できない。これは、1992年、2000年の大統領選挙と同様の状況だ。
■ 6月27日の候補者討論会はバイデン大統領に深刻なダメージ
最近の世論調査では、バイデン大統領の支持率が5月30日の39.5%で底を打ち、6月23日には41.0%へ上昇してトランプ前大統領を上回っていた。しかし、現在はトランプ前大統領がリードを拡げている状況だ。6月27日の候補者討論会は、民主党の候補者として疑問が生じるほどバイデン大統領にとり良くない結果と言える。ニューヨークタイムズの社説を含め、立候補辞退を求める声が急増した。
■ 接戦州は6州
全米50州及びワシントンD.C.を選挙区とする米国大統領選挙では、各州ごとに連邦上下院議員数に従って割り当てられた選挙人を奪い合う仕組みだ。勝敗を決するのは、伝統的な民主党の支持基盤である『ブルーステート』、共和党色が強い『レッドステート』ではなく、選挙の度毎に勝敗が異なる『スウィングステート』だ。アリゾナ、ジョージア、ミシガン、ネバダ、ペンシルバニア、ウィスコンシンの6州がそれに相当すると見られる。
■ スウィングステートではトランプ前大統領がリード
現段階の世論調査では、スウィングステート6州のうち、アリゾナ、ジョージア、ネバダの3州において、トランプ前大統領が4~8%程度ポイントのリードを確保した。さらに、両候補が競っていた”Rust belt(赤錆びた工業地帯)”と呼ばれるミシガン、ペンシルバニア、ウィスコンシンでも、前大統領がリードを拡げつつある。これら6州でトランプ前大統領が優位に立てば、バイデン大統領は苦しい立場となるだろう。
■ 民主、共和両党の党大会による候補者指名はこれから
第1回候補者討論会の結果として、トランプ前大統領が優位に立ったと言い切れない理由は、本選まであと4ヶ月あり、民主、共和両党共に候補者を正式に指名する全国大会を終えていないからだ。民主党は候補者を入れ替える可能性すらある。また、バイデン大統領対トランプ前大統領の枠組みは変わらないとしても、9月10日に第2回の討論会が予定されるなど、結果を左右し得るイベントは少なくない。
■ ハリス副大統領の他に州知事が4名
仮にバイデン大統領が候補者指名を辞退した場合、民主党の候補となり得るのは、カマラ・ハリス副大統領の他、カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事、ミシガン州のグレッチェ・ホイットマー知事などと見られる。いずれも「将来の候補」とみなされつつ、現職対前職による異例の戦いに埋没しかねない今回の大統領選挙を避け、新人同士が大統領の座を争う4年後に照準を絞ったと見られる有力知事だ。
■ 米国大統領選挙アップデート③:まとめ
第1回候補者討論会はバイデン大統領にとり厳しい結果だが、今回の大統領選はまだ波乱の可能性がある。民主党の全国大会前に同党の候補者が換る可能性を含め、本選まで4ヶ月の間にイベントが多く残されているからだ。バイデン大統領対トランプ前大統領のケースでも、前大統領が完全に優勢とは言い切れないだろう。例えば、既に有罪評決を受けた不正支出問題に対して、ニューヨーク州地裁の量刑宣告は7月から9月に延期された。選挙の直前であり、有権者の心理に与える影響は無視できない。
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