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米国大統領選挙の情勢 アップデート
市川 眞一
2024/02/06

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概要

米国の大統領選挙イヤーは、アイオワ州とニューハンプシャー州での共和党の党大会、予備選が終わった。特に注目されたニューハンプシャー州では、ドナルド・トランプ前大統領が勝利したものの、ニッキー・ヘイリー前国連大使をノックアウトするには至っていない。次の焦点は2月24日のサウスカロライナにおける予備選となろう。最新の世論調査を見ると、トランプ前大統領の支持率は70%を超え、ヘイリー氏は20%程度に止まっている。ヘイリー氏の地元であるサウスカロライナでトランプ氏が勝てば、共和党の候補者レースは実質的に終了するだろう。一方、ヘイリー氏がこの州で巻き返した場合、3月5日のスーパーチューズデーへ期待がつながることになりそうだ。ただし、ジョー・バイデン大統領とトランプ前大統領のリターンマッチとなれば、「人気投票」と言うよりも、「不人気投票」の様相を帯びる可能性は否定できない。その場合、無所属での出馬が取りざたされるロバート・ケネディJr氏やリズ・チェイニー氏の動向が結果に大きく影響するのではないか。



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■ 今のところトランプ前大統領が独走

ABC系のニュースウェッブであるファイブサーティエイトにれば、足下、トランプ氏の支持率が70%を超えたのに対し、ヘイリー氏は20%程度に止まっている。2月8日のネバダ州における党大会もトランプ氏の圧勝が見込まれるため、次の焦点は2月24日におけるサウスカロライナ州での予備選となろう。ヘイリー氏が知事を務めた地元で敗れた場合、候補者レースからの離脱もあり得る。



■ スーパーチューズデーで大勢が決まる

米国大統領選挙における民主党と共和党の候補者レースは、州毎に選出される党大会への代議員を争う。この代議員が党大会で候補者へ投票、党としての指名候補が決まる仕組みだ。共和党の場合、2,429名の代議員を選出することから、指名を受けるには1,215名の代議員を得なければならない。なかでも874名の代議員が決まる3月5日の『スーパーチューズデー』が極めて重要だ。



■ 指名は序盤戦の勢いが左右

共和党代議員2,429名のうち、これまでに決まったのは62名に過ぎない。このうち、33名をトランプ前大統領が確保、ヘイリー氏が得た代議員は17名だ。過去の候補者レースを見ると、序盤の3~5州の動向が結果を大きく左右するケースが少なくない。有力候補であった実業家のビベック・ラムスワミ氏、フロリダ州のロン・ディサンティス知事が既に撤退、トランプ氏とヘイリー氏のマッチレースになった。



■ ヘイリー氏にはサウスカロライナが極めて重要

ヘイリー氏が3月5日のスーパーチューズデーへ向け踏み止まるには、州知事を務めた地元であるサウスカロライナ州が極めて重要だ。2月24日の予備選でトップになるか、最悪でもトランプ前大統領との差が数パーセント以内でなければならないだろう。もっとも、現在の同州における世論調査を見ると、トランプ氏を支持するとの回答者が60%以上に達し、ヘイリー氏は30%程度に止まっている。ヘイリー氏には高いハードルだ。



■ バイデン大統領の支持率は低迷

バイデン大統領の支持率は40%前後を推移しており、不支持率を15%ポイント程度下回った状態だ。景気が堅調に推移、物価上昇率も縮小して株価は上昇しているものの、大統領の支持にはつながっていない。理由の1つは、81歳になった同大統領の年齢だろう。若年層から支持をえられていないことが弱点になっている。中絶容認を主張する一方、厳格な移民政策を採るなど、低所得の白人層への支持拡大を図るようだ。



■ 再選成功、失敗の両グループに経済的特徴

戦後、再選を目指した11名の大統領のうち、再選された7名は選挙の前年、当年の実質成長率がいずれもプラスだった。一方、再選に失敗した4名は、そのいずれかの年で実質成長率がマイナスになっている。昨年、米国の実質成長率は2.5%だった。2024年についても、逼迫した労働需給による低失業率、賃上げで個人消費が堅調であり、プラス成長となる見込みだ。景気はバイデン大統領に味方している。



■ バイデン大統領は現職の強み活かせず

11月5日の本選が4年前と同じ顔ぶれだった場合、現時点の世論調査では、若干ながらトランプ前大統領がバイデン大統領をリードした状況だ。ただし、投票日まであと9ヶ月を残すため、この程度の差では全く予想はできない。バイデン大統領は現職の強みを生かせず、トランプ前大統領も熱烈な支持者以外への拡がりがない。この2人の戦いは、「人気投票」ではなく、「不人気投票」と言えるかもしれない。



■ ケネディJr、チェイニー両氏立候補は選挙結果に影響を及ぼす可能性

「不人気投票」の場合、無所属候補の得票が結果を大きく左右する可能性がある。民主党系ではジョン・F・ケネディ元大統領の甥のロバート・ケネディ・ジュニア氏、共和党系ではディック・チェイニー元副大統領を父に持つリズ・チェイニー元下院議員の出馬が取り沙汰されてきた。両氏ともに立候補すれば民主党票、共和党票を奪う可能性があるため、選挙の攪乱要因と言えるだろう。



■ 米国大統領選挙の情勢 アップデート:まとめ



今回の大統領選挙は、候補者レースの本命とされるバイデン大統領が年齢の問題を抱え、トランプ前大統領は一部の熱狂的な支持者以外への支持が広がっているわけではない。当面の焦点は2月24日に行われるサウスカロライナ州の共和党予備選だ。これでヘイリー前国連大使が踏み止まれば、同党の候補者レースは不透明になるだろう。一方、『バイデンvs. トランプ』の場合、不人気投票となる可能性が強い。その場合、無所属で有力候補が立てば、1992、2000年のような攪乱要因となるのではないか。


市川 眞一
ピクテ・ジャパン株式会社
シニア・フェロー

日系証券の系列投信会社でファンドマネージャーなどを経て、1994年以降、フランス系、スイス系2つの証券にてストラテジスト。この間、内閣官房構造改革特区評価委員、規制・制度改革推進委員会委員、行政刷新会議事業仕分け評価者など公職を多数歴任。著書に『政策論争のデタラメ』、『中国のジレンマ 日米のリスク』(いずれも新潮社)、『あなたはアベノミクスで幸せになれるか?』(日本経済新聞出版社)など。


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