Article Title
グロース株とバリュー株 「スタイル・ローテーション」よりも「スタイル分散」
田中 純平
2021/03/22

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー


概要

3月16-17日開催のFOMC(米連邦公開市場委員会)では経済予測が上方修正された一方、政策金利については2023年末まで据え置きとする方針が示された。世界株式市場では、FOMC前後でグロース株指数とバリュー株指数のパフォーマンスが日替わりで大きく変動しており、不安定な相場展開が続いている。はたしてグロース株とバリュー株、どちらに投資すべきか?



Article Body Text

10年以上にわたって続いたグロース株相場

MSCI世界バリュー株指数と同グロース株指数のパフォーマンスを1974年12月末からの長期で計測すると、バリュー株のほうがパフォーマンスが高いことが分かる(図表1)。

しかし、この2つの指数の相対パフォーマンス(グロース株÷バリュー株)でみると、2006年12月末をボトム(底)に、近年では米10年国債利回りの急低下を受けて、グロース株のパフォーマンスが追い上げる状況が続いていた(図表2)。

この状況に変化が表れたのが2020年8月末以降だ。米10年国債利回りが「経済の正常化」や「追加景気対策」への期待感を背景に上昇に転じたことをきっかけに、足元ではバリュー株優位の展開へシフトしている(図表3)。2021年3月のFOMCの結果を受けて、グロース株/バリュー株の相対パフォーマンスが大きく変動したのも、その背景には米10年国債利回りの変動がある。

「スタイル・ローテーション」よりも「スタイル分散」のほうが重要

グロース株優位の相場展開が10年以上も経過したことを考えれば、投資家のポートフォリオがグロース株中心に構築されていたとしても不思議ではないだろう。そのような中、米10年国債利回りの上昇をきっかけにバリュー株優位の展開へ急速にシフトしたことで、「スタイル・ローテーション(投資家がグロース株からバリュー株などへ投資スタイルを変化させること)」が巻き起こり、相場への影響が大きくなったことが推測される。だが、「足元の」米10年国債利回りと相対パフォーマンスの連動性は2006年12月末以降に生じた現象であり、1981年9月末から2006年12月末(ITバブル期除く)までは、むしろ米10年国債利回りの低下とバリュー株優位の展開が並存していた。つまり、短期的には米10年国債利回りと相対パフォーマンスの連動性が強いように思えても、いつ「デカップリング(連動性の低下や逆転現象)」を引き起こすか分からない。二者択一の「スタイル・ローテーション」よりも、「スタイル分散(グロース株とバリュー株に分散投資」のほうが、長期投資においてはより重要だろう。


田中 純平
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系運用会社に入社後、主に世界株式を対象としたファンドのアクティブ・ファンドマネージャーとして約14年間運用に従事。北米株式部門でリッパー・ファンド・アワードの受賞歴を誇る。ピクテ入社後はストラテジストとして、主に世界株式市場の投資戦略などを担当。ピクテのハウス・ビューを策定するピクテ・ストラテジー・ユニット(PSU)の参加メンバー。2019年より日経CNBC「朝エクスプレス」に出演。2023年より週刊エコノミスト「THE MARKET」に連載。日本経済新聞ではコメントが多数引用されるなど、メディアでの情報発信も積極的に行う。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

手数料およびリスクについてはこちら

MSCI指数は、MSCIが開発した指数です。同指数に対する著作権、知的所有権その他一切の権利はMSCIに帰属します。またMSCIは、同指数の内容を変更する権利および公表を停止する権利を有しています。



関連記事


フランス総選挙 極右優勢で金融市場は警戒ムード

軟調な日本株の裏に好調な中国株

NYダウは史上初の4万ドル超え けん引役は意外な銘柄

米商業用不動産ローン問題 米地銀株の受難

米企業決算はS&P500を押し上げる材料になるか?

原油高と物価高が引き起こす米国株の地殻変動