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米国株は値固めの様相を呈するも予断を許さない状況
田中 純平
2022/01/31

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概要

1月28日の米国株式市場では、前日引け後に発表された米アップルの好決算に加えて、テクニカル/バリュエーション面を評価したと見られる押し目買いが入り、S&P500指数は前日比で2.43%上昇した。米国株は値固めの様相を呈するものの、FRBの金融政策見通しが依然として不透明であることから、当面は物価指標等に左右されやすい不安定な相場展開が予想される。



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1月FOMCは金融政策の先行き不透明感を払拭できず

現地1月26日に発表された1月FOMC(米国連邦公開市場委員会)声明文では、FRB(米国連邦準備制度理事会)が利上げをまもなく行うことが適切になると予想していることが明らかになり、事実上、次回3月FOMCでの利上げを示唆する内容となった。また、同時に発表された「連銀のバランスシート縮小に関する原則」の声明文においても、FRBが利上げ後にバランスシート縮小を開始すると想定していることが明示された。

ここまではマーケットの想定通りだった。しかし、肝心の利上げペースや利上げ幅について、パウエルFRB議長はFOMC後の記者会見で終始明言を避けた。このため、マーケットでは3月FOMCで0.25%ではなく0.50%の利上げもありうるとの観測が広がったほか、利上げペースについても年4回からさらに加速するシナリオを一部織り込む展開となった(図表1)。FRBの金融政策方針が明らかになれば株式市場は落ち着きを取り戻すことが期待されていたが、実際はさらに先行き不透明感が高まる真逆の結果になってしまった。

米国株の予想PERはコロナ前のピーク時近辺まで低下

1月26日のS&P500指数は1月FOMC後に前日比プラス圏からマイナス圏に転じ、翌日27日には終値で年初来安値である4,326.51をつけた。しかし、すでに年初来で10%近く下落していたことに加え、27日引け後に米アップルが市場予想を上回る決算を発表したことなどを受け、同指数は28日に前日比2.43%上昇、ちょうど200日移動平均線近辺まで急反発した(図表2)。また、27日は市場予想PER(株価収益率)が19.2倍まで低下し、コロナ前のピーク(2020年2月19日)である19.1倍まで迫ったことも押し目買いを誘発した可能性がある(図表3)。しかし、下値リスクは依然として残されている。FRBの金融政策が不透明な中、今後発表される物価指標が市場予想よりも上昇したり、FRB高官のタカ派発言が相次げば、より一層FRBの金融引き締め観測が高まり、市場予想PERをさらに押し下げる可能性があるからだ(コロナ前の市場予想PERの平均値は15.8倍であり、コロナ前のピークで下げ止まる保証はどこにもない)。米国株が値固めの様相を呈したとしても、当面は予断を許さない状況だろう。


田中 純平
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系運用会社に入社後、主に世界株式を対象としたファンドのアクティブ・ファンドマネージャーとして約14年間運用に従事。北米株式部門でリッパー・ファンド・アワードの受賞経験を誇る。ピクテ入社後はストラテジストとして主に世界株式市場の投資戦略等を担う。ピクテのハウス・ビューを策定するピクテ・ストラテジー・ユニット(PSU)の参加メンバー。2019年より日経CNBC「朝エクスプレス」に出演、2023年よりテレビ東京「Newsモーニングサテライト」に出演。さらに、2023年からは週刊エコノミスト「THE MARKET」で連載。日本経済新聞やブルームバーグではコメントが多数引用されるなど、メディアでの情報発信も積極的に行う。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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