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- ウクライナ侵攻でロシアはSWIFT排除 中銀制裁で外貨準備も制限
ロシアがウクライナへ侵攻した結果、主要先進国はロシアに対する制裁をこれまで段階的に打ち出してきた。しかし、ここに来てロシアの商業銀行をSWIFTから排除し、ロシア中央銀行の外貨準備も制限するという強烈な制裁を一気に打ち出した。「最終兵器」とも呼ばれるこの制裁は戦後の国際秩序維持のために不可欠ではあるものの、金融市場に与える影響は計り知れない。
ロシア商業銀行のSWIFT排除に反対してきた欧州の態度が急変
SWIFT(国際銀行間通信協会)は銀行などの金融機関の国際決済網を担う団体で、貿易決済や送金時に使用されるシステムを運営している。200以上の国又は地域で11,000以上の金融機関が利用しており、2021年は1日当たり約4200万件の送金情報を取り扱っている。
SWIFTから排除されると貿易の決済や国際送金が困難になるため、特にロシアからの天然ガス供給に依存する欧州は、ロシアの商業銀行をSWIFTから除外することにこれまで躊躇してきた。しかし、ロシアがウクライナ侵攻によって国際法と国連憲章の原則に著しく違反し、戦後の国際秩序を破壊する行為を目の当たりにした結果、欧州も自国経済への悪影響を覚悟のうえで制裁せざるを得ない状況へ事態は急変した。
2月26日、ポーランドのマテウシュ・モラウィエツキ首相は英フィナンシャル・タイムズへ寄稿し、「私たちは幻想を抱くべきではない。(ロシアによるウクライナ侵攻は)ほんの始まりに過ぎないかもしれない。明日には、ラトビア、リトアニア、エストニア、そしてポーランドが次の列をなすかもしれない」と危機感をあらわにした。モラウィエツキ首相の寄稿文は、欧州に広がる緊張感を如実に表していると言える。
今回は米国、カナダ、英国、ドイツ、フランス、イタリア、欧州委員会が連名でロシア商業銀行のSWIFT排除を発表(その後、日本も同様の制裁を発表)したわけだが、ロシア中央銀行の外貨準備を制限する制裁が同時に発表されたことも大きなサプライズとなった。
ロシア中央銀行の外貨準備に制限が課されれば、ロシア・ルーブルの通貨防衛機能が著しく低下するため、ロシア商業銀行におけるSWIFT排除の効果がよりいっそう高まることになる。だが、それは同時にグローバルな金融市場のストレスも同時に高めることになりかねないため、「対岸の火事」では済まなくなる可能性がある。
停戦協議期待で急上昇した株式市場の反動安は避けられないだろう
2月25日の米国株式市場では、ロシアがウクライナとの停戦協議に応じる方針を示したことから、S&P500指数は前日比+2.24%と急騰した。しかし、ロシアはウクライナが交渉を拒否したと翌日土曜日に発表、ロシアのウクライナ侵攻が再開された。
マーケットは停戦観測期待等を背景に上昇していただけに、今週はその反動から失望売りが出る可能性がある。さらに重要なのが、主要先進国が適用したロシア商業銀行に対するSWIFT排除とロシア中央銀行に対する外貨準備の制限といった経済制裁の影響だ。
過去には核開発疑惑等を受けて、イランがSWIFT排除や中央銀行への制裁を課せられたことがある。しかし、経済規模からしてロシアはイランの比ではないことは自明の理であり、ロシアほどの大国がグローバル経済、ひいては金融市場に与える影響は計り知れない。
地政学リスクが高まる局面では、「銃声が鳴ったら買え」という相場格言が引用されることが多いが、戦後の国際秩序が崩壊する中、過去の経験則が今回も当てはまる保証はどこにもない。
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