Article Title
米国株はFOMC後に急反発 市場はリスクを織り込んだのか?
田中 純平
2022/03/22

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー


概要

概ね市場予想通りとなった3月FOMCやパウエルFRB議長の楽観的な景気見通し、中国政府による経済・金融の安定化方針やロシア国債がデフォルト回避といった報道等を受けて、S&P500指数は急反発する展開となった。だが、米国経済のスタグフレーション・リスクやロシア国債のデフォルト・リスクは依然として払拭されていないため、引き続き注意が必要だ。



Article Body Text

市場予想通りのFOMCやロシア国債のデフォルト回避等を受けS&P500指数は急反発

米連邦準備制度理事会(FRB)は、3月15-16日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)において政策金利の誘導目標を市場予想通り0.25%引き上げることを決定した。同時に発表されたFOMCメンバーによる経済・政策見通し(SEP)では、2022年に計7回の利上げ(1回の利上げ=0.25%として換算)が予想の中央値であることが明らかとなり、3月15日時点のフェデラル・ファンド金利先物市場では年内約7回の利上げが織り込まれていたことから、こちらも市場予想通りの結果になった。また、FOMC後のパウエルFRB議長の記者会見では、米国経済について楽観的な見通しが示されたことなどが好感された。

さらに、中国政府が経済成長と金融市場の安定を重視する方針を16日に示したことや、ロシアの外貨建てソブリン債のクーポン支払いが17日に無事行われたと報道されるなど、FOMC以外でも好材料が相次いだことから、3月16日以降のS&P500指数は急反発する展開となった(図表1)。

悲観的な投資家センチメントが後押しするも根本的なリスク要因は払拭されず

S&P500指数の急反発を支えたもうひとつの要因としては、悲観的な投資家センチメントが挙げられる。直近の米個人投資家協会(AAII)投資家センチメント指数は、2018年12月の「米中貿易戦争とFRB金融引き締め懸念」や、2020年4月の「新型コロナショック」と同水準まで悲観に振れていたことから、S&P500指数はポジティブな材料に反応しやすかったことが見て取れる(図表2)。

しかし、FRBは23年と24年に中立金利よりも高い水準まで利上げを行い、景気よりもインフレ抑制を重視する姿勢をSEPにおいて示しているほか、ロシアとウクライナの停戦交渉に先行き不透明感が高まる中、足元ではWTI原油先物価格が再び上昇に転じるなど、スタグフレーション・リスクはむしろ高まっている(図表3)。

また、ロシアの外貨建てソブリン債のクーポン支払いについても米財務省外国資産管理室(OFAC)は米国人がロシアの財務省、中銀、政府系ファンドが発行した「債券ないし株式に絡む利子、配当、償還金」の受け取りを5月25日まで承認する(それ以降は未定)としており、デフォルト・リスクも依然としてくすぶる。マーケットの根本的なリスク要因が払拭されていない点には引き続き注意が必要だ。


田中 純平
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系運用会社に入社後、主に世界株式を対象としたファンドのアクティブ・ファンドマネージャーとして約14年間運用に従事。北米株式部門でリッパー・ファンド・アワードの受賞歴を誇る。ピクテ入社後はストラテジストとして、主に世界株式市場の投資戦略などを担当。ピクテのハウス・ビューを策定するピクテ・ストラテジー・ユニット(PSU)の参加メンバー。2019年より日経CNBC「朝エクスプレス」に出演。2023年より週刊エコノミスト「THE MARKET」に連載。日本経済新聞ではコメントが多数引用されるなど、メディアでの情報発信も積極的に行う。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

手数料およびリスクについてはこちら



関連記事


フランス総選挙 極右優勢で金融市場は警戒ムード

軟調な日本株の裏に好調な中国株

NYダウは史上初の4万ドル超え けん引役は意外な銘柄

米商業用不動産ローン問題 米地銀株の受難

米企業決算はS&P500を押し上げる材料になるか?

原油高と物価高が引き起こす米国株の地殻変動