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- 米国は欧州向けLNGを追加供給することで合意 今後の展開は?
欧州はロシア産の天然ガスからの脱却を図る一環として、米国からLNGを追加調達することで合意した。しかし、LNGを増産するには多額の設備投資と数年単位の期間を要するうえ、ロシア産の天然ガスを米国だけで代替することも困難だ。また、米国の石油・ガス会社は増産のための積極的な設備投資を躊躇する可能性があり、当面は天然ガス需給が逼迫するおそれがある。
米国はEU向けに150億立方メートルのLNGを追加供給することで合意
米国は2022年に少なくとも150億立方メートルの液化天然ガス(LNG)を追加供給することで欧州連合(EU)と25日に合意し、2030年まで年間500億立方メートルのLNGを追加供給する方針も掲げられた。また、欧州は2027年までにロシア産化石燃料への依存解消を図る具体策として、LNG輸入インフラの認可迅速化や、毎年11月1日の段階でエネルギーの貯蔵率90%を満たす貯蔵義務やEUによる天然ガスの共同調達、太陽光発電・風力発電の推進と水素技術の開発、室温調整機器(スマート・サーモスタット)やヒートポンプなどの省エネ技術の導入拡大などを挙げている。この合意を受けて、25日の米国天然ガス先物価格(期近物)は前日比+3.15%と続伸する展開となった(図表1)。
欧州が輸入するロシア産の天然ガスを米国だけで補完することは困難
しかし、米国産LNGの増産は短期的には困難であり現実的ではない。LNGの供給を増やすには輸出する米国側と輸入するEU側で多額の設備投資を行う必要があり、数年単位の期間も要する。また、500億立方メートルの追加供給を行うには、米国LNGの輸出量を2020年対比で81%も増やさなくてはならない(図表2)。少なくとも今年の追加供給については、他国向けに供給する予定だったLNG輸出分の一部をEU向けに再配分する対応にとどまる可能性がある。さらに、2020年に欧州がロシアから輸入したLNGは172億立方メートル、天然ガス(パイプライン経由)は1677億立方メートルにもなる。仮に米国がEUに対して500億立方メートルのLNGを追加供給できたとしても、EUのロシア産輸入量(LNG+天然ガス)の27%程度しか代替することができない。
米国の石油・ガス会社は多額の設備投資を抑制する可能性がある
米ダラス連銀が石油・ガス会社を対象に行った最新のアンケート調査では、全体の59%が資本配分政策における規律維持を求める投資家からの圧力によって、成長投資を抑制している実態が明らかになった(図表3)。天然ガス価格が急上昇したとはいえ、それがすぐさま設備投資の増額(=供給増)という経営判断には至りにくい状況がうかがえる。天然ガス需給は当面逼迫した状態が続く可能性がある。
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