- Article Title
- 米国5月CPIはインフレ・ピークアウト説を覆す 6月FOMCは「要警戒」
先週のS&P500指数は①「タカ派的なECBの金融政策」や②「米国5月CPIの上振れ」などをきっかけに急落する展開となった。中でも②は市場に蔓延していたインフレ・ピークアウト説を覆したため、金融市場に与えた衝撃は相当大きい。FRBは物価抑制の観点においてマーケットから「信認」を得るため、今週のFOMCではさらにタカ派メッセージを強化することが予想される。
米国5月CPIは市場予想に反して伸び率が加速
先週のS&P500指数における週間騰落率は-5.05%と大幅安の展開となった(図表1)。主なきっかけは6月9日の欧州中央銀行(ECB)定例理事会と6月10日に発表された米国5月消費者物価指数(CPI)だ。ECBは7月に0.25%の利上げ方針を示し、9月には0.5%の利上げに踏み切る含みをもたせた。タカ派的なECBの金融政策が嫌気され、9日のS&P500指数は前日比2.38%下落したが、波乱はそれだけではなかった。翌日に発表された米国5月CPIは前年同月比+8.6%と市場予想の同+8.3%を大幅に上回り、ピークをつけたと見られていた3月の同+8.5%も超えた。これを受けて10日のS&P500指数は前日比2.91%下落した。
その米国5月CPIでは、実に幅広い品目においてインフレ圧力が顕在化した。食品(前年同月比+10.1%)やエネルギー(同+34.6%)はさることながら、新車(同+12.6%)、中古車・中古トラック(同+16.1%)、帰属家賃(同+5.1%)、航空運賃(同+37.8%)などは、前年同月比で見ても、また前月比で見ても大きく上昇しており、CPIが5月時点でピークアウトする兆候は見られなった。米国債券市場では米10年国債利回りが一時3.17%まで上昇し、今年5月9日にピークをつけた3.20%まで迫る勢いだった。
フェデラル・ファンド金利から米国CPIを差し引いた実質政策金利は歴史的なマイナス金利
フェデラル・ファンド金利先物市場から算出した市場参加者の利上げ回数予想(1回の利上げ=0.25%)は、米国CPIの上振れを背景に6月9日から10日にかけて大きく上方修正(今年6月:2.1回→2.3回、7月:4.2回→4.6回、9月:5.9回→6.7回)されており、1回当たりの利上げ幅予想を0.5%から0.75%へ引き上げた市場参加者が幾分増えたことがうかがえる。そもそも、米国名目政策金利から米国CPIを差し引いた実質政策金利は歴史的なマイナス金利となっており、米国連邦準備制度理事会(FRB)にとってこの超緩和的な状況を是正させることが喫緊の課題となっている(図表2)。利上げペースが引き上げられたとしても、特段の違和感は無いだろう。
すでに米国の物価急騰は個人の消費意欲を減退させている。今年6月のミシガン大学消費者センチメント指数(速報値)は50.2と市場予想の58.1を大幅に下回り、過去最低を記録した(図表3)。このように消費マインドが大きく低迷する中で過去利上げが行われたケースは無く、米国経済の下振れリスクが高まっていることが示唆される。だが、FRBとしては物価抑制を重視せざるを得ないジレンマに陥っており、マーケットからの「信認」を得るためには、今週の米国連邦公開市場委員会(FOMC)においてタカ派メッセージをさらに強化する必要がある。株式市場の苦難は道半ばだ。
当資料をご利用にあたっての注意事項等
●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。