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主要中銀が利上げを急ぐ 欧米では金融ストレス悪化の兆候も 
田中 純平
2022/06/21

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概要

6月は主要中央銀行による利上げが相次いだ。当初のガイダンスを上回る0.75%の利上げを決定したFRB、7月に0.25%の利上げ方針を示したECB、連続利上げを実施したカナダ銀行、オーストラリア準備銀行、イングランド銀行に加え、大方の予想に反して約15年ぶりの利上げを決定したスイス国立銀行等によって、欧米金融市場では金融ストレス悪化の兆候が表れている。



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欧州中央銀行は7月に11年ぶりの利上げ予定、スイス中央銀行が15年ぶりの利上げ実施

6月は主要中央銀行による利上げラッシュになった(図表1)。6月1日はカナダ銀行(BOC)が政策金利を0.5%引き上げ3会合連続の利上げを実施、7日にはオーストラリア準備銀行(RBA)が政策金利を0.5%引き上げ、2会合連続の利上げを行った。9日は欧州中央銀行(ECB)が7月に0.25%の利上げに踏み切る意向を示し、9月にはさらに利上げ幅が拡大する可能性についても言及した(ECBが予定通り利上げを行えば約11年ぶりの利上げになる)。また、15日には米国連邦準備制度理事会(FRB)が政策金利を0.75%引き上げ、前回5月に行った0.5%の引き上げから利上げペースを加速させた。さらに、翌日にはイングランド銀行(BOE)が政策金利を0.25%引き上げ5会合連続の利上げを行ったほか、市場予想に反してスイス国立銀行(SNB)も約15年ぶりとなる政策金利の引き上げを行い、利上げ幅は0.5%とした。

主要中央銀行(除く日銀)による相次ぐタカ派転換を受けて、株式市場も動揺を隠せないでいる。主要先進国における株価指数の推移を見ると、年初から5月にかけては英国株、日本株、カナダ株の値持ちが比較的良く、欧州株、スイス株、米国株、豪州株が軟調に推移していた。しかし、今月に入ってからはこれらの株価指数がいっせいに値を下げる展開になった(図表2)。

世界で同時進行中の急激な金融引き締め政策は金融ストレス悪化を引き起こしかねない

世界中で急激な金融引き締めが同時進行した結果、金融市場では金融ストレス悪化の兆候が表れている(図表3)。

ブルームバーグ金融情勢指数(米国)は、ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)/オーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)スプレッドや米国ハイイールド債スプレッド、CBOEボラティリティ(VIX)指数などから算出される金融ストレス指数で、マイナスの値が大きいほど金融ストレスが高まっていることを示す。この指数が年初来で悪化傾向となっており、同様の傾向がユーロ圏の金融情勢指数からも確認できる。現状はコロナ・ショックやリーマン・ショックほどの水準ではないが、世界的な利上げドミノに連動するかたちで金融ストレスが高まっている現状を鑑みれば、今後利上げが進行する過程で金融ストレスがさらに悪化する可能性は否定できないだろう。


田中 純平
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系運用会社に入社後、主に世界株式を対象としたファンドのアクティブ・ファンドマネージャーとして約14年間運用に従事。北米株式部門でリッパー・ファンド・アワードの受賞経験を誇る。ピクテ入社後はストラテジストとして主に世界株式市場の投資戦略等を担う。ピクテのハウス・ビューを策定するピクテ・ストラテジー・ユニット(PSU)の参加メンバー。2019年より日経CNBC「朝エクスプレス」に出演、2023年よりテレビ東京「Newsモーニングサテライト」に出演。さらに、2023年からは週刊エコノミスト「THE MARKET」で連載。日本経済新聞やブルームバーグではコメントが多数引用されるなど、メディアでの情報発信も積極的に行う。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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