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景気悪化は織り込み済み?米国株は「サマーラリー」に突入したのか?
田中 純平
2022/07/25

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概要

米国株式市場は今月に入ってからリバウンドが見られるが、売られ過ぎからの一時的な「揺り戻し」や季節性の範囲内である可能性がある。グローバルなインフレ高進や世界的な利上げラッシュに伴う景気悪化もすでに織り込まれたと判断する見方もあるが、7月22日(金)の米国株式市場を見る限り、それは時期尚早と判断せざるを得ない。



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今年前半に株価が急落した銘柄ほど7月はその反動から上昇しやすかった

S&P500指数にやや反転の兆しが出ている。昨年末から今年6月末までの期間でS&P500指数は約20%下落したが、6月末から7月22日にかけては逆に約5%上昇した。特に株価の反発が強かったのがミーム株だ。最終損益が赤字の企業が大半のミーム株指数は、米国連邦準備制度理事会(FRB)の急激な利上げ観測等を背景に今年前半は急落したが、今月に入ってからはS&P500指数を上回る株価上昇率となっている。典型的なリターン・リバーサル相場と言えよう(図表1)。

米国株式市場の反転のきっかけになった材料としては、①FRB高官発言によって7月の米国連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ観測が1.00%から0.75%へ下方修正されたこと、②ノルドストリーム1においてロシアからドイツへの天然ガス供給が一部再開されたこと、③米系証券会社の月次ファンド・マネージャー調査で株式への資金配分が2008年10月以来の低水準となったこと(逆張り指標)、④米国の4-6月期企業決算の出足が想定外に堅調だったことなどが挙げられるが、実態としては売られ過ぎからの一時的な「揺り戻し」と捉えるべきだろう。

しかし、景気悪化が十分織り込まれたと判断するには時期尚早

グローバルなインフレ高進と中央銀行における世界的な利上げラッシュ、そしてそれに伴うグローバルな景気悪化懸念といったリスク要因は依然として払拭されていない。しかし、株式市場の一部の「強気派」はこれらの懸念材料がある程度マーケットに織り込まれたと主張する。実際、米国の経済サプライズ指数は、市場予想を下回る経済指標が相次いだことから急低下しており、すでに過去の歴史的な低水準に接近している(図表2)。株式市場の市場参加者が市場予想を下回る経済指標に慣れてしまい、「売り疲れ」状態となった可能性は否定できない。

しかし、7月22日にS&Pグローバルが発表した米国の購買担当者景気指数(PMI)の総合指数は、7月の速報値が47.5と市場予想の52.4を大幅に下回り、好不況の分かれ目となる50を下回った。これを受けて米国の経済サプライズ指数は再度低下、市場予想を大幅に下回った米スナップ4-6月期決算と相まって、米国株式市場は反落する展開となった。景気悪化がすでに織り込まれたと判断するには時期尚早とも言える。

それでは、米国株式市場の季節性はどうだろうか?S&P500指数の月間平均騰落率を1950年1月までさかのぼって検証したのが図表3だ。これを見ると7月は月間平均騰落率が+1.1%と、5~6月と比較して株高になる「サマーラリー」の傾向が見られるが、8月は+0.1%と「夏枯れ」の様子がうかがえる。足元の株価上昇は一時的な反動や季節性の範囲内である可能性も視野に入れる必要があるだろう。


田中 純平
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系運用会社に入社後、主に世界株式を対象としたファンドのアクティブ・ファンドマネージャーとして約14年間運用に従事。北米株式部門でリッパー・ファンド・アワードの受賞経験を誇る。ピクテ入社後はストラテジストとして主に世界株式市場の投資戦略等を担う。ピクテのハウス・ビューを策定するピクテ・ストラテジー・ユニット(PSU)の参加メンバー。2019年より日経CNBC「朝エクスプレス」に出演、2023年よりテレビ東京「Newsモーニングサテライト」に出演。さらに、2023年からは週刊エコノミスト「THE MARKET」で連載。日本経済新聞やブルームバーグではコメントが多数引用されるなど、メディアでの情報発信も積極的に行う。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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