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S&P500指数は「半値戻し」 ベアマーケット脱出宣言はまだ早い?
田中 純平
2022/08/15

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概要

S&P500指数は8月12日、今年1月3日の高値から6月16日の安値までの下落幅の50%を取り戻す「半値戻し」を達成した。「半値戻しは全値戻し」の相場格言に従えば「強気シグナル点灯」だが、7月米CPIにおける家賃と帰属家賃は依然として加速しており、市場予想EPSに至っては低下トレンドへ転換した可能性も出てきた。ベアマーケット脱出を宣言するには時期尚早だろう。



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S&P500指数は「半値戻し」を達成したが・・・

S&P500指数は8月12日、今年1月3日の高値(4796.56)と6月16日の安値(3666.77)の半値である4231.67を超える「半値戻し」を終値ベースで達成した(図表1)。「半値戻しは全値戻し」の相場格言に従えば、「強気シグナル点灯」ということになる。しかし、当然のことながら相場に絶対は無い。相場格言の勝率が百発百中であれば、苦労せずとも「アノマリー(理論的根拠は無いが良く当たる経験則)」による恩恵を享受することが可能だが、現実はそう甘くはない。

相場の急上昇をけん引したのが、「インフレ・ピークアウト」→「今年の利上げペース鈍化/来年は利下げ転換」→「株高」というシナリオ(観測)であれば、インフレが本当にピークアウトして、米連邦準備制度理事会(FRB)のインフレ目標である2%へ収束する道筋が見えてくるかが今後の焦点になってくる。たしかに、国際商品市場では原油やガソリン、小麦やとうもろこしなどの価格はすでにピークから下落しており、米消費者物価指数(CPI)がいつピークアウトしてもおかしくない状況だ。しかし、総合CPIの約3割を占める「家賃」と「帰属家賃」は、直近7月時点でもピークアウトの兆しは出ていない(図表2)。「エネルギー」や「食品」はピークアウトするかもしれないが、「家賃」と「帰属家賃」の加速が収束しなければ、当面は2%よりも高い水準で「高止まり」の状態になる可能性もある。そのような状況で、市場の期待通りFRBが来年早々に利下げに転じるかどうかは甚だ疑問だ。

市場予想EPSはコロナショック以来の低下トレンドへ転換か?

S&P500指数が「半値戻し」を達成した一方で、「市場予想EPS(1株当たり利益)」、すなわち業績見通しは悪化した(図表3)。コロナショック以降、この市場予想EPSは右肩上がりで堅調に推移し、S&P500指数上昇の原動力になっていた。だが、世界的なインフレ圧力の高まりやFRBによる急激な金融引き締め政策、中国のゼロコロナ政策等によって、市場予想EPSはコロナショック以来の低下トレンドへ転換した可能性がここにきて出てきた。一時的な鈍化に過ぎない可能性もあるが、S&P500指数の値動きを左右しかねない重要な指標であるため、今後の動向に注意を払う必要がある。S&P500指数がベアマーケット(弱気相場)を完全に脱出したと宣言するには時期尚早だろう。


田中 純平
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系運用会社に入社後、主に世界株式を対象としたファンドのアクティブ・ファンドマネージャーとして約14年間運用に従事。北米株式部門でリッパー・ファンド・アワードの受賞経験を誇る。ピクテ入社後はストラテジストとして主に世界株式市場の投資戦略等を担う。ピクテのハウス・ビューを策定するピクテ・ストラテジー・ユニット(PSU)の参加メンバー。2019年より日経CNBC「朝エクスプレス」に出演、2023年よりテレビ東京「Newsモーニングサテライト」に出演。さらに、2023年からは週刊エコノミスト「THE MARKET」で連載。日本経済新聞やブルームバーグではコメントが多数引用されるなど、メディアでの情報発信も積極的に行う。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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