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- 堅調な米労働市場に潜む米景気後退リスクの「落とし穴」
米国は2四半期連続でGDP成長率がマイナスになる「テクニカル・リセッション」となったが、米労働市場が依然として堅調なため、株式市場では景気後退リスクを十分織り込む展開にはなっていない。しかし、過去の景気後退期では低水準にある米失業率が上昇し始めるタイミングで景気後退入りしているため、堅調な労働市場を過信すると手痛いしっぺ返しを受ける可能性がある。
米国は「テクニカル・リセッション」となったが、正式な景気後退期とはまだ判定されていない
米実質国内総生産(GDP)成長率(前期比年率、季節調整済)は、2022年1-3月期に1.6%減、4-6月期に0.9%減となり、2四半期連続でマイナス成長となる「テクニカル・リセッション」となった(図表1)。しかし、米連邦準備制度理事会(FRB)高官を含め、市場関係者の多くは米国経済が景気後退入りしたとは考えていない。その理由として挙げられているのが堅調な米労働市場だ。
2022年7月の米非農業部門雇用者数は前月比で52.8万人増となり、市場予想の同25.0万人増を大幅に上回った。また、失業率も3.5%と市場予想の3.6%を下回り、こちらも堅調な労働市場をうかがわせる内容となった。そもそも、米国の景気後退期を判定するのは民間団体の全米経済研究所(NBER)だ。NBERはGDP成長率だけでなく、実質個人所得や実質個人消費支出、非農業部門雇用者数や鉱工業生産など、様々な経済指標を景気後退の判断材料としている。NBERが数か月後に景気後退入りと判定する可能性もあるが、労働市場が力強く推移している現状を踏まえると、景気後退と判定される可能性は低いように思われる。実際、米実質GDP成長率の市場予想を見ても、2022年7-9月期以降はプラス成長に回帰すると見込まれている(図表2)。市場関係者はあくまで米国経済のソフト・ランディング(軟着陸)を想定していることになる。
過去にNBERが判定した景気後退期は、失業率が悪化し始めたタイミングで訪れた
しかし、ここで注意が必要なのは米失業率の動向だ。足元の米失業率は歴史的低水準となっているが、過去の景気後退期と重ね合わせて見ると、低水準にある失業率が上昇(悪化)し始めるタイミングで、米国は景気後退入りしていることが分かる(図表3)。つまり、堅調な労働市場もひとたび悪化してしまえば、景気後退リスクが急速に高まることを意味する。堅調な労働市場を過信すると手痛いしっぺ返しを受ける可能性がある。
ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は、景気後退を引き起こさずインフレを低下させられるかは分からないと18日に発言した。また、リッチモンド連銀のバーキン総裁も19日、金融当局は高インフレを抑制させる決意だとし、その取り組みの過程で米国の景気後退を引き起こすリスクもあるとの認識を示した。FRB高官からも景気後退リスクに言及する発言が目立ち始めたことは注目に値するだろう。
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