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- 米雇用統計で上昇した米国株を急落させた欧州発の「売り材料」
9月2日に発表された8月米雇用統計はまちまちの内容だったが、米国株式市場はひとまず「買い」で反応した。しかし、ロシアから欧州へ天然ガスを供給する「ノルドストリーム」の稼働停止が延長されることが明らかになると、米国株式市場は引けにかけて急落する展開となり、欧州の景気後退リスクが米国株式市場にも影響を及ぼす構図が改めて浮き彫りになった。
米雇用統計はまちまちの内容だったが、米国株式市場はひとまず「買い」で反応
9月2日に発表された8月米非農業部門雇用者数は前月比31.5万人増と市場予想の同29.8万人増を上回り、引き続き堅調な米労働市場が確認された。しかし、同時に発表された8月米失業率は3.7%と市場予想の3.5%を上回り、8月米時間当たり賃金も前年同月比+5.2%と市場予想の同+5.3%を下回ったことから、ややインフレ緩和的とも解釈される結果となり、まちまちの内容となった。これらを受けて米国株式市場はひとまず「買い」で反応、一時S&P500指数は前日比1%を超える上昇率となった。
しかし、その株高に水を差したのが欧州発の「売り材料」だった。ロシアの国営天然ガス会社ガスプロムは、欧州向けのガスパイプライン「ノルドストリーム」の稼働停止を延長すると発表し、S&P500指数はこれをきっかけに引けにかけて急落する展開となった(図表1)。
当初、稼働停止期間は8月31日から9月3日までの予定だったが、メンテナンス中に発覚した技術的な問題を理由に稼働停止が延長されることになった。主要7ヵ国(G7)がロシア産原油及び石油製品の価格に上限を設定する方針を発表した直後に飛び込んできた報道なだけに、市場ではロシアから欧州への天然ガス輸出がこのまま途絶するリスクが意識された可能性がある。
ロシア産の天然ガス供給が途絶した場合、欧州の景気後退リスクは格段に高まる公算
ノルドストリームの稼働率は稼働停止前の段階で約2割となっており、ロシアによるウクライナ侵攻前の約9割の水準からすでに大幅に低下していた。このため、ロシアから欧州への天然ガスパイプライン全体の輸出量は、2021年のピーク時と比較しておよそ1/4まで減少した(図表2)。
一方、欧州連合(EU)の天然ガス貯蔵率は9月2日時点で81%であり、目標としていた80%を約2か月前倒しで達成した(図表3)。需要期の冬場に備えて天然ガスを十分確保したかに見えるが、これもロシア産天然ガスの供給途絶や天候次第では不足するおそれがあると指摘されている。
国際通貨基金(IMF)によれば、ロシアから欧州への天然ガス供給が途絶した場合、EUの国内総生産(GDP)はワースト・ケースで2.65%減少すると試算されており、景気後退リスクが格段に高まる公算だ。そうなれば、米国経済も無傷ではいられなくなる。米国株式市場の先行きを見通すうえでは、欧州発のリスク要因にも注視する必要があるだろう。
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