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NYダウは年初来安値を更新 急落の理由は?
田中 純平
2022/09/26

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概要

9月23日のNYダウ指数(米国株)は前日比1.62%安の29,590.41ドルとなり、6月17日につけた年初来安値(29,888.78ドル)を更新する展開となった。株価急落の背景にあるのは9月FOMCで発表されたドットチャートが主因だが、8月26日に開催されたジャクソンホール会議でのパウエルFRB議長講演からすでに「伏線」は張られていたと見るべきだろう。



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9月FOMC後に欧米株式市場は下落トレンドが加速

米連邦準備制度理事会(FRB)が9月21日の米連邦公開市場委員会(FOMC)において3会合連続となる0.75%の利上げを発表して以降、欧米株式市場は下落トレンドが加速する展開となっている。NYダウ指数(米国株)は9月23日の終値で29,590.41ドルとなり、6月17日につけた年初来安値(29,888.78ドル)を更新した(図表1)。

また、STOXX600指数(欧州株)は9月23日の終値で390.40となり、こちらも7月5日につけた年初来安値(400.68)を前日に続いてさらに更新する展開となった(図表2)。

主因は9月FOMCで同時に公表されたFOMC参加メンバーによる政策金利見通し(ドットチャート)だ。大半の市場関係者は、8月26日に行われたジャクソンホール会議でのパウエルFRB議長によるタカ派メッセージ(詳細は8月29日発行のDeep Insightレポートに記載)や、9月13日に発表された8月米消費者物価指数(CPI)の上振れを受けて、9月FOMC前にFRBの利上げ見通しを上方修正させていた。しかし、今回公表されたドットチャートは、その大方の予想をさらに上回る内容だった。

FRBの利上げ到達点の見通しは大幅に上方修正

今回のドットチャートでは、2022年12月時点の利上げ予想が4.375% (前回予想は3.375%)、2023年12月時点の予想が4.625%(同3.750%)となり、いずれも前回のドットチャート(2022年6月時点)から大幅に上方修正されている。フェデラル・ファンド(FF)金利先物のイールド・カーブを見る限り、市場参加者はジャクソンホール会議以降、利上げ見通しを引き上げる動きを示していたが、その「織り込み」が十分では無かったようだ(図表3)。

実際、大手外資系証券会社も9月FOMCを受けて、FRBの利上げ到達点の見通しを相次いで上方修正した。従来の見通しからおよそ0.25%~0.75%引き上げられ、利上げ到達点の見通しは概ね4.5%~5.0%に集中している。また、これに呼応するかたちでS&P500指数における22年末目標を下方修正させる動きも足元では目立ち始めた。

「効率的市場仮説」によれば、利用可能な全ての情報は瞬時に市場価格に反映されるはずだが、現実はそのような状況にはなっていない可能性がある。直近約1カ月で見られた欧米株式市場における下落トレンドの加速は、市場がFRBの利上げ姿勢(及びインフレ圧力の高まり)を甘く見た「ミスプライス」が根本的な原因にあると考えられる。


田中 純平
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系運用会社に入社後、主に世界株式を対象としたファンドのアクティブ・ファンドマネージャーとして約14年間運用に従事。北米株式部門でリッパー・ファンド・アワードの受賞歴を誇る。ピクテ入社後はストラテジストとして、主に世界株式市場の投資戦略などを担当。ピクテのハウス・ビューを策定するピクテ・ストラテジー・ユニット(PSU)の参加メンバー。2019年より日経CNBC「朝エクスプレス」に出演。2023年より週刊エコノミスト「THE MARKET」に連載。日本経済新聞ではコメントが多数引用されるなど、メディアでの情報発信も積極的に行う。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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