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- 対ロシア新規制 原油価格の行方
12月5日、G7、EU、豪州はロシア産原油の輸入価格に1bbl=60ドルの上限制を導入した。ウラル産原油の推移から見て、これが世界の市況に与える影響は限定的だろう。サウジアラビアが供給量を調整、原油価格を実質的管理することで、当面は80ドル中心の推移になるのではないか。結果として、日米両国においてはエネルギーが物価に与える影響は中立的になる見込みだ。
対ロ新制裁:現状追認的で市況には影響小さい
G7、EU及びオーストラリアは、12月2日、ロシアから原油を輸入する際の上限を1bbl=60ドルにすることで合意した。既に5日より適用されている。この上限価格は、極めて微妙な水準と言えるだろう。ロシア産原油の輸出価格は、昨年半以降、代表的な油種であるウラル産の場合、その60ドルを下限とするレベルで推移している(図表1)。
従って、国際的な原油市況に大きな変化がないのであれば、新たな措置の実質的な効果は限定的なのではないか。
EU加盟国の議論において、対ロシア強硬派であるポーランド、エストニア、リトアニアは、35ドル程度を主張したと言われている。一方、海運国としてロシア産原油の運送に関わるギリシャ、キプロス、マルタなどは、65~70ドルでの決着を要求していたことが報じられた。
EU加盟国においては、当然、ロシアとの伝統的な関係やビジネスの状況が国毎に大きく異なる。原油輸入に関する制裁も例外ではなく、制裁強化を目指す国、取引継続を望む国、その立場の違いにより、加盟国間の対立が改めて表面化した感は否めない。その妥協点が60ドルだったと言えそうだ。効果よりも合意することが優先されたのではないか。
サウジアラビア:スウィングプロデューサーとして影響力回復
12月4日に開催されたOPECプラスによる第34回共同閣僚監視委員会(JMMC)では、2023年1月からの産油量を日量4,186万bblで据え置くことが決まった。一方、11月21日付のウォールストリートジャーナルは、同委員会で日量50万bblの増産が議論される可能性を報じた。ロシア産原油に課される輸入価格上限が低く設定された場合、供給量が減少しかねないため、それを緩和する措置に他ならない。
サウジアラビアはこの報道を否定したが、ウォールストリートジャーナルが根も葉もないことを書いたとは考え難い。G7、EUの議論の結果次第で、増産の可能性もあったのではないか。それは、OPECプラスの主要国が、WTI先物ベースで1bbl=80ドル程度の水準を適切と考えている傍証と言える。つまり、有力産油国は、原油価格の下落だけでなく、大幅な上昇も望んでいないと見られる。消費国側が代替エネルギーへの急速なシフトを進めることがなく、且つ主要産油国経済が潤うレベル・・・それが1bbl=80ドル程度なのだろう。
ちなみに、OPECの予測によれば、2023年に関して、世界の原油需要は概ね横ばいで推移する見通しだ(図表2)。
原油価格が大きく上昇すれば、脱化石燃料の流れを食い止める意味で、サウジアラビアが増産すると予想される。国際社会が分断の時代に突入するなか、原油市況の鍵を握る同国は、明らかに世界への影響力を回復した。この見方が正しいとすれば、原油価格は安定し、日米両国などの物価に与えるインパクトは2023年前半へ向け中立となるだろう。
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