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- 米国株式市場に見る「不穏な株価形成」
米国株式市場では超大型株が年初来で極端に上昇している。これは欧州株式市場には見られない特徴であり、本レポートではファンダメンタルズ要因以外の影響について考察を加えている。また、過去に超大型株が物色された場面との類似点や、その後の展開についても分析を行った。
超大型株が上昇をけん引した米国株式市場
S&P500指数における年初来の株価騰落率は6.9%高(図表1)となっているが、主要銘柄の値動きは様相が大きく異なる。
米国株式市場における時価総額上位10銘柄の年初来株価騰落率は、(米投資会社バークシャー・ハサウェイ株や米医療保険ユナイテッドヘルス・グループ株を除いて)軒並み20%超の上昇率となっており、これらの平均株価騰落率は+32.8%にもなる(図表2)。S&P500指数は年初来で+6.9%であることから、今年に入ってからの米国株式市場は超大型株が上昇をけん引していることが分かる。
中でも突出して株価が急騰した銘柄は米半導体大手のエヌビディア株だ。米オープンAIが開発した対話型人工知能「ChatGPT(チャットGPT)」の普及によって恩恵を受けると期待されたエヌビディア株は年初来で85.0%高となり、時価総額は4月6日時点で6,678億ドル(約88兆円)に達した。
また、旧フェイスブックの米メタ・プラットフォームズ株は、人員削減等による業績回復期待を受けて年初来で79.6%高となったほか、米電気自動車大手のテスラ株は中国のリオープン(経済再開)による業績回復期待等から年初来で50.2%高となった。個別銘柄の株価上昇にはそれぞれ固有の要因が挙げられるものの、約3か月で株価が50%超も上昇するほど、ファンダメンタルズが劇的に好転したと判断するのは楽観的過ぎるかもしれない。
欧州株に超大型株物色は見られない
欧州株の状況はどうだろうか?欧州の主要株価指数であるSTOXX600指数は年初来で8.0%高となった一方、欧州株式における時価総額上位10銘柄の平均株価騰落率は+12.3%と、米国株ほど大きな乖離は見られない(図表3)。
それでは、なぜ米国株では超大型株が極端に上昇する展開になったのか?ファンダメンタルズ以外の要因としては、金融不安を背景とした銀行株から(超大型)ハイテク株への資金退避や、米国連邦準備制度理事会(FRB)の流動性供給による成長株物色等が挙げられる。特にFRBの流動性供給によって、FRB総資産は3月8日時点の約8.34兆ドルから22日時点の約8.73兆ドルまでにおよそ0.39兆ドルも急増し、市場に短期的な「成長株の買いシグナル」を送ってしまった可能性がある(図表4)。だが、4月5日時点のFRB総資産はすでに約8.63兆ドルまで減少しており、前述した需給要因は成長株に対して逆風となりつつある。
2021年11月も超大型株が物色される
超大型株のパフォーマンスの影響を受けやすい一般的なS&P500時価総額ウェイト指数と、幅広い米国株のパフォーマンスが反映されやすいS&P500均等ウェイト指数との相対パフォーマンスを見ると、今回と同様に超大型株が上昇する場面が2021年11月にも見られた(図表5)。
しかし、タカ派へ傾斜したパウエルFRB議長の議会証言(21/11/30-12/1)を「転換点」に、その後は超大型株が劣後し市場全体も下落する展開となった。FRB総資産における当時と今回との類似性は見られないものの、FRBの流動性供給が増加から減少へ転じる「転換点」という意味では、共通点が見い出せる。超大型株の不穏な株価形成は、一過性になるリスクをはらんでいる。
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