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- FRB利上げ打ち止めは米株高のサインか?
5月FOMCの結果を受けて、フェデラル・ファンド金利先物市場では利上げ打ち止め/年内利下げ観測が高まっている。一般的にFRBの利上げ打ち止めは米株高のサインと捉えられているが、死角は無いのだろうか?2000年以降の利上げ打ち止め局面を振り返り、リスク要因を検証する。
5月FOMCの結果を受けて利下げ観測が高まる
5月2~3日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)では、市場予想通り0.25%の利上げが決定された。今回発表された声明文では、これまで記載されていた「追加的な金融引き締めが適切かもしれない」という表現が削除されたことなどから、フェデラル・ファンド金利先物市場では利上げ打ち止め及び利下げ観測が高まるきっかけとなった(図表1)。
FOMC後の記者会見でパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は追加利上げの可能性を示唆し、利下げ観測を打ち消す発言も行ったものの、市場ではあまり材料視されなかったようだ。
年初来の米国株式市場の上昇をけん引した材料としては、①2022年の下落相場からの反動高、②市場予想を上回るマクロ経済指標や企業決算、③金融不安を背景としたFRBの流動性供給に加えて、④FRBの利上げ打ち止め/利下げ観測が大きかったと考えられる(図表2)。
①~③に関してはファクトベースで語ることができるが、④に関しては期待先行の側面が強いため、この妥当性を検証することが米国株式市場の先行きを見通すうえで重要になると考えられる。そこで、まずはFRBの利上げ打ち止めによって、過去、株高が形成されていたかを検証してみた。
利上げ打ち止め後は株高になりやすいが、逆イールドには注意が必要
FRBの利上げ打ち止め局面は2000年以降、計3回あった。1回目は2000年5月16日~2001年1月2日、2回目は2006年6月29日~2007年9月17日、そして3回目は2018年12月19日~2019年7月30日だ。利上げが打ち止めになった日(=利上げが最後に行われた日)からS&P500指数の騰落率を期間別に計測すると、最初の3カ月間ではいずれの局面もプラスになっており、「利上げ打ち止め=株高」の経験則が裏付けられている。しかし、6カ月後の騰落率を見ると2000年だけがマイナスになっていたことが分かる(図表3)。
実はこの時、米国債市場では10年国債利回りが2年国債利回りよりも低くなる逆イールド現象が発生していた。通常、このような現象が発生すると、米国経済は遅れて景気後退入りする経験則がある(図表4)。
実際、米国経済は2001年3月から2001年11月までの間で景気後退に陥っており、逆イールドが的確に将来の景気後退リスクを織り込んでいたことが見て取れる。このため、2000年は景気後退リスク(+割高なバリュエーション)によって株安になったと考えられる。
厳密には2006年もわずかながら逆イールド現象が見られたが、この時は逆イールドの幅が小さく、明確なシグナルを発していなかったとみなせる。また、2018年の場合は逆イールドすら発生していなかった。景気後退入りのリスクが低かったので、2006年と2018年は利上げ打ち止めが素直に好感されたとも言えるだろう。
それでは現在はどうだろうか?逆イールドの幅は5月9日時点でマイナス0.50%となっており、今年3月8日時点のマイナス1.08%には及ばないものの、比較的強いシグナルを発している。NY連銀が算出する米景気後退確率(12カ月先)も2024年4月時点で68%と、ITバブル崩壊やリーマン・ショックを上回る確率を示している(図表5)。油断は禁物だ。
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