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米国株の方向感を左右する10月の注目イベント
田中 純平
2023/10/06

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概要

米長期金利の上昇等をきっかけにS&P500指数は9月下旬頃から下げ足を速める展開となり、足元では200日移動平均線をわずかに上回る水準まで調整している。当レポートでは、S&P500指数の方向感を見極めるうえで重要な10月の注目イベントに焦点を絞る。



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米長期金利の急上昇でS&P500指数は200日移動平均線近くまで急落

S&P500指数は9月下旬頃から下げ足を速める展開となり、足元では200日移動平均線を若干上回る水準まで調整している(図表1)。きっかけは米10年国債利回りの急上昇だ。

9月19-20日開催のFOMC(米連邦公開市場委員会)で示されたFOMC参加メンバーの政策金利見通しを受けて、FRB(米連邦準備制度理事会)の政策金利が比較的長期間にわたって高く推移するリスクがマーケットで警戒された(詳細は2023年9月22日発行のDeep Insightレポート「9月FOMCで米国株が急落した理由」を参照)。その後は、地区連銀総裁らによる相次ぐタカ派発言、市場予想を上回った9月米ISM製造業景況感指数や8月米JOLTS求人件数などが、米10年国債利回りを押し上げる材料となった。

米10年国債利回りがさらに上昇する可能性はあるのだろうか?10月上旬から中旬にかけては主要なマクロ経済指標が相次いで発表される(図表2)。中でも10月6日の9月米雇用統計と10月12日の9月米消費者物価指数、さらには10月19日のパウエルFRB議長講演は要注目だ。マーケット全体が金利動向に神経質になる中、これらの経済指標や講演の結果次第で、米10年国債利回りが乱高下する可能性は大いにある。

一方、10月下旬以降は米国株の上昇をけん引する「マグニフィセント7(アップル、マイクロソフト、アマゾン、エヌビディア、アルファベット、テスラ、メタ・プラットフォームズ)」の決算が順次発表される。マーケットの関心が「マクロ経済・金利動向」から、「個別企業の決算動向」に変わる可能性もあるので、S&P500指数の方向感を見極める上ではこれらの決算発表にも注目すべきだろう。

マーケットは米国企業全体のV字回復を期待

では、「マグニフィセント7」を含めた米国企業全体の業績動向はどのような状況だろうか?23年7-9月期の米国企業全体の市場予想EPS(1株当たり利益)成長率は9月29日時点で前年同期比マイナス1.0%となっており、市場予想通りとなれば4四半期連続のマイナス成長になる見込みだ(図表3)。しかし、これ自体はすでに織り込み済みであり、むしろマーケットは23年10-12月期以降の「V字回復」を期待している。

気掛かりなのは、その23年10-12月期以降の市場予想EPS成長率の「推移」に大きな変化が見られないことだ(図表4)。景気や物価、金利など、この短期間でマクロ経済動向は目まぐるしく変化したが、今年6月以降の市場予想EPS成長率には目立った変化が無い。つまり、株式市場にとってサプライズがあるとすれば、23年7-9月期の決算内容よりも、23年10-12月期のガイダンス(企業が発表する業績見通し)ということになるだろう。 


田中 純平
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系運用会社に入社後、主に世界株式を対象としたファンドのアクティブ・ファンドマネージャーとして約14年間運用に従事。北米株式部門でリッパー・ファンド・アワードの受賞経験を誇る。ピクテ入社後はストラテジストとして主に世界株式市場の投資戦略等を担う。ピクテのハウス・ビューを策定するピクテ・ストラテジー・ユニット(PSU)の参加メンバー。2019年より日経CNBC「朝エクスプレス」に出演、2023年よりテレビ東京「Newsモーニングサテライト」に出演。さらに、2023年からは週刊エコノミスト「THE MARKET」で連載。日本経済新聞やブルームバーグではコメントが多数引用されるなど、メディアでの情報発信も積極的に行う。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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