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- パウエルFRB議長発言 金融市場を「震撼」
10月19日に開催されたパウエルFRB議長の講演では、大方の予想に反して「タカ派」寄りの発言が飛び出し、金融市場を揺るがすきっかけとなった。イスラエル情勢の緊迫化や米中対立の激化、米下院の機能不全など、米国株式市場が直面するリスク要因はあまりにも多く、そして根が深い。
パウエルFRB議長は大方の予想に反して「タカ派」寄りのコメント
パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長は10月19日、「ニューヨーク経済クラブ」で米国経済の見通しについて講演を行った。パウエル氏は労働市場における需給緩和の兆候が見られるとの見解を示したほか、これまで行ってきた政策金利の引き上げによる影響を見極める必要があるとした。また、他のFRB高官同様、米長期金利の上昇によって金融環境がタイト化しているとも言及し、追加利上げ観測を打ち消すかのような発言を行った。
ここまでは大方の予想通りの内容だったと言えよう。しかし、その後は「今の金融政策は引き締めすぎではない」と「タカ派」寄りの発言を行ったことから、米10年国債利回りは一気に5%目前まで上昇、S&P500指数も引けにかけて下落幅が拡大する展開となった(図表1、2)。
フェデラル・ファンド金利先物から算出される23年12月FOMC(米連邦公開市場委員会)における0.25%の利上げ確率は、18日時点の36.9%から19日時点は24.8%へ低下したため、短期金融市場ではパウエル氏の講演内容をハト派的と捉えたと解釈できる。だが、米国債券市場や米国株式市場における市場参加者の思惑は明らかに異なったようだ(図表3)。
イスラエル情勢は緊迫化
米ニューヨーク・マーカンタイル取引所では19日、WTI原油先物価格(中心限月)が一時1バレル90ドルを超える場面があった(図表4)。イスラエルのガラント国防相がパレスチナ自治区ガザ付近に集結した軍部隊に「(もうすぐガザを)中で見ることになる」と発言したことが報道され、イスラエル軍によるガザへの地上侵攻が近いとの観測が高まった。また、紅海に展開する米海軍の駆逐艦「カーニー」が、イエメンの親イラン組織がイスラエルに向けて発射したとされる巡航ミサイル3発と複数の無人機を撃墜したと米国防総省が発表したことも、さらに事態を緊迫化させる要因となった。
イスラム組織ハマスを含むパレスチナ武装勢力がイスラエル領内を襲撃した当初は、WTI原油先物価格は上昇した一方、米10年国債利回りは低下し、米国株式市場では米長期金利の低下が好感されるかたちで上昇する展開となっていた。しかし、足元ではWTI原油先物価格が上昇し続ける中、米10年国債利回りも5%近くまで上昇、「原油高」と「金利高」が米国株の上値を抑える状況となっている。
米中対立激化と米下院の機能不全もリスク要因
米商務省産業安全保障局(BIS)は10月17日、先端半導体における対中輸出規制の強化を発表した。新たな規制は第三国から中国へ先端半導体が渡る経路を遮断する狙いがあるほか、人工知能(AI)で使用される先端半導体の規制基準を回避する「抜け道」を防ぐ意図がある。これを受けて米半導体大手エヌビディアの株価は2日間で8.5%も急落した(図表5)。
さらに米下院では、解任されたマッカーシー下院議長の後任を決める2回目の議長選が18日に実施されたものの失敗に終わり、機能不全に陥っている。11月中旬までに新たな予算を可決できなければ、政府機関の一部閉鎖に追い込まれる可能性がある。米国株式市場が直面するリスク要因はあまりにも多く、そして根が深い。
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