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- 米中首脳会談 株式市場への影響は?
11月15日に行われた米中首脳会談で両首脳は軍事対話再開等で合意したが、株式市場に対して直接影響を及ぼすであろう経済安全保障分野では、米国側が譲歩する姿勢を一切見せなかった。習近平国家主席は会談後の晩餐会で、米中が「Win-Win」の関係になりうることを強調したものの、現状では「Lose-Lose」の関係に向かっている可能性がある。
米中首脳会談のポイント
米国のバイデン大統領と中国の習近平国家主席による1年ぶりの首脳会談が11月15日、米カリフォルニア州サンフランシスコ近郊で行われた。両首脳は軍事対話再開を合意したほか、気候変動の作業部会再開、人工知能(AI)を巡る政府間対話の新設、麻薬対策協力に向けた作業部会設置などで合意した。しかし、株式市場に対して直接影響を及ぼすであろう経済安全保障分野、とりわけ先端半導体・半導体製造装置に関する対中輸出規制や投資制限に関しては、米国側が譲歩する姿勢を一切見せなかった。経済安全保障面で米国側に方針変更が無かったことは米国株式市場でも織り込み済みだったことから、15日以降のS&P500指数やナスダック総合指数は概ね横ばい圏での推移となった(図表1、2)。
習近平氏は首脳会談後に米国の友好団体との晩餐会で演説に臨んだ。晩餐会にはアップルのティム・クック最高責任者(CEO)やブラックロックのラリー・フィンクCEOのほか、ブラックストーン、ブリッジウォーター、ファイザー、フェデックス、ビザ、マスターカードなどの経営幹部が出席したと報じられている。米主要メディアの報道によれば、習氏は人的交流を通じて二国間関係を強化することの重要性を訴えたが、貿易や投資については特に強調せず、関係改善への具体策も示さなかったという。経済安全保障の分野においても両国の溝がなお深いことがうかがえる。
先端半導体の対中輸出規制で米中企業に悪影響が出始めた
そのような状況の中、中国のアリババ・グループはクラウド事業のスピンオフ(分離・独立)計画を撤回すると11月16日に発表したことから、同社の米国預託証券(ADR)は前日比9.14%安となった(図表3)。同社は先端半導体に対する米国の輸出規制拡大で、クラウド・インテリジェンス・グループの見通しに不確実性が生じたことが理由だと説明している。また、同社は食料品事業の「盒馬(フーマー)鮮生」の新規株式公開(IPO)も中断すると同時に発表した。
さらに、米半導体製造装置大手のアプライド・マテリアルズの株価も11月17日に急落した。同社は11月16日引け後に23年8-10月期決算を発表、1株当たり利益は市場予想を上回ったものの、対中輸出規制違反の疑いで米国の刑事捜査に直面していると報道されたことから、17日の株価は前日比4.02%安となった(図表4)。報道によれば、同社は中国の半導体受託製造最大手の中芯国際集成電路製造(SMIC)との取引を巡って適切な許可を得ずに、何億ドルもの機器を販売した疑惑があるという。
米国による先端半導体・半導体製造装置の対中輸出規制は、中国のIT企業だけでなく、米国の半導体・半導体製造装置メーカーにも悪影響が及び始めている。習近平氏は米中首脳会談後の晩餐会で『我々には協力の余地が十分あり、互いの成功と「Win-Win(双方が利益を得る)」の成果を達成するために協力し合うことができる』と強調したものの、今のところ経済安全保障分野においては「Lose-Lose(双方が不利益を被る)」の関係に向かっている可能性がある。米中対立による影響は今後ますます表面化してくるだろう。
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