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- 米株高の「資産効果」で個人消費は上振れか?
「資産効果」とは、株価などの資産価格の上昇(下落)によって、個人消費が増加(減少)する現象を指す。米国では家計の金融資産に占める投資信託や株式等の割合が高いため、「資産効果」も比較的高く出やすい特徴がある。足元の米株高を背景に、今後は米国の個人消費がさらに上振れる可能性も否定できないだろう。
株価も住宅価格も上がる米国
米国株式市場の代表的な株価指数であるS&P500指数は、2018年末から2024年2月28日にかけて102%上昇した(配当無し、米ドル建て)(図表1)。
そのけん引役となっているのが、マグニフィセント・セブン(マイクロソフト、アップル、エヌビディア、アマゾン、メタ・プラットフォームズ、アルファベット、テスラ)と呼ばれる米国の超大型成長株7銘柄だ。生成AIブーム等を背景にこれらの株価は大幅高となっており、中でもAI向け半導体を手掛けるエヌビディアは同期間で2,227%も爆騰した。
米国の住宅価格も堅調だ。FHFA米国住宅価格指数は、2018年10-12月期から2023年10-12月期にかけて55%上昇しており、特に州別GDP(国内総生産)ランキングで全米4位のフロリダ州は同期間で+79%と値上がり率トップとなった(図表2)。
そもそも米国の住宅市場は在庫不足によって需給がひっ迫している。住宅ローン金利が高止まりする中、当初低い固定金利で借り入れた個人は、住宅の買い替えを行うと高い固定金利で住宅ローンを組み直す必要があるため、買い替えに及び腰になる。これが中古住宅で在庫不足が生じるひとつの要因となっている。
「資産効果」によって個人消費が上振れる可能性あり
「資産効果」とは、株価などの資産価格の上昇(下落)によって、個人消費が増加(減少)する現象を指す。日銀の展望レポート(2016年4月)によれば、日本における「資産効果」は100円の金融資産価値の増減に対して個人消費が2~4円程度変化するとの先行研究が紹介されている。一方、(単純比較できるものではないが)米国の場合は1ドルの金融資産価値の増減に対して個人消費が9セント変化すると試算されている(June 2023 Visa Business and Economic Insights調べ)。米国は日本と比較して家計の金融資産に占める投資信託と株式等の割合が51.3%と高いため、株式の値上がりによる恩恵を個人が享受しやすい構造となっており、これが日米の「資産効果」の違いに表れていると推察される(図表3)。
金融資産に分類されない住宅の値上がりについても同様の効果が期待できる。同じ調査では、1ドルの住宅価値増減に対して個人消費が4セント変化すると試算されている。金融資産ほどではないが、住宅にも「資産効果」がある。
底堅い個人消費等を受けて米国のGDP成長率の市場予想は上方修正
米国実質GDP(国内総生産)成長率の24年市場予想の推移を見ると、昨年8月から上方修正傾向になっていることが分かる。過剰貯蓄の取り崩しや堅調な労働市場等を背景に、個人消費の見通しが切り上がっていることがその要因として挙げられるが、今後はこれらの要因に加えて資産効果による消費の上振れについても視野に入れる必要があるだろう(図表4)。
昨年12月時点におけるS&P500指数の24年末市場予想は4,778ポイントだったことから、年初来の急ピッチな株高は大半の市場関係者にとって想定外の動きとなっているはずだ。このため、その資産効果もまだ市場予想に十分織り込まれていない可能性がある。景気が上振れることになれば株価も上振れることが想定されるため、「ポジティブ・ループ(株高→消費増→景気上振れ→株高)」が発生する可能性も否定できない(ただし、逆も然りであることは注意が必要)。
一方、ダウンサイド・リスクは米国CPI(消費者物価指数)の高止まりないし再加速シナリオだ。マーケットはFRB(米連邦準備制度理事会)が今年年央から利下げを開始することを前提に株式を買い進めているため、好調な米国経済を背景に利下げが延期されることになれば、株式市場において何らかの調整が起こっても不思議ではない。米国のCPIからは当面目が離せない(図表5)。
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