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NYダウは史上初の4万ドル超え けん引役は意外な銘柄 
田中 純平
2024/05/21

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概要

5月17日(金)のNYダウの終値は前日比0.34%高の40,003.59ドルとなり、史上初の4万ドル超えとなった。生成AI関連銘柄が株価指数の上昇をけん引するS&P500指数とは異なり、NYダウでは意外な銘柄が株価指数の上昇をけん引する。



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NYダウは史上初の4万ドル超え

5月17日(金)のダウ工業株30種平均指数(以下、NYダウ)の終値は前日比0.34%高の40,003.59ドルとなり、史上初の4万ドル超えとなった(図表1)。年初来の騰落率は配当込みで6.90%上昇しており、NYダウのような大型優良株にも上昇相場の波が押し寄せている。

NYダウは米国の優良企業30銘柄で構成され、輸送及び公共事業以外のすべての業種を網羅するよう設計されている(図表2)。

特徴的なのは株価指数の算出方式だ。一般的な株価指数(MSCI米国株指数やS&P500指数など)は「時価総額加重方式」(時価総額の大きい銘柄ほど構成比率が高くなる仕組み)を採用するが、NYダウは「株価加重方式」(株価の高い銘柄ほど構成比率が高くなる仕組み)を採用する。

また、株価指数の構成銘柄についてはS&Pダウ・ジョーンズ指数の代表者3人とウォール・ストリート・ジャーナル社2人から構成されるダウ平均委員会(Averages Committee)が選定する。構成銘柄を選定する際は、企業の名声、持続的な成長実績、投資家の関心度の高さをなどを総合的に評価するため、定量的な時価総額加重方式の株価指数と比較して構成銘柄も独特になる。

NYダウをけん引する消費関連株

MSCI米国株指数やS&P500指数は、マイクロソフト、アマゾン・ドット・コム、エヌビディア、アルファベット、メタプラットフォームズといった主要な米生成AI(人工知能)関連銘柄だけで構成比率が2割を超えるが、NYダウにはマイクロソフトとアマゾン・ドット・コムの2銘柄のみが含まれ、構成比率も1割弱だ(図表3)。

このため株価指数のけん引役も異なる。NYダウ構成銘柄の年初来騰落率TOP10を見ると、アメリカン・エキスプレス株やウォルマート株といった消費関連株が上位に並んでおり、生成AI関連のアマゾン・ドット・コム株は3位だ(図表4)。

アメリカン・エキスプレスは4月19日に発表した24年1-3月期決算で、調整後EPS(1株当たり利益)が市場予想を上回ったことなどが市場で好感された。プレミアムカードが引き続き好調で、同社CFO(最高財務責任者)は「プレミアム商品への需要は衰えていない」と語った。

ウォルマートも5月16日に発表した24年2-4月期決算で、調整後EPSが市場予想を上回り、通期のガイダンスをやや上方修正したことなどが市場で好感された。同社CFOは特に高所得者層のシェア拡大が業績に寄与したことを強調した。

物価高や金利上昇を受けて米国の個人消費の先行きに対する警戒感が高まる中、アメリカン・エキスプレス株やウォルマート株といった消費関連株がNYダウの上昇をけん引する状況は、意外感をもって受け止められているのではないだろうか。

米サンフランシスコ連銀は5月3日のブログで米国の過剰貯蓄が底をついた可能性を指摘したばかりだ(図表5)。

米国ではコロナ禍で政府から支給されたコロナ助成金を取り崩すかたちでこれまで個人消費が支えられてきたが、今後は低所得層の消費が低調となる一方で高所得層の消費が総じて堅調となる「二極化現象」が起こる可能性がある。


田中 純平
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系運用会社に入社後、主に世界株式を対象としたファンドのアクティブ・ファンドマネージャーとして約14年間運用に従事。北米株式部門でリッパー・ファンド・アワードの受賞経験を誇る。ピクテ入社後はストラテジストとして主に世界株式市場の投資戦略等を担う。ピクテのハウス・ビューを策定するピクテ・ストラテジー・ユニット(PSU)の参加メンバー。2019年より日経CNBC「朝エクスプレス」に出演、2023年よりテレビ東京「Newsモーニングサテライト」に出演。さらに、2023年からは週刊エコノミスト「THE MARKET」で連載。日本経済新聞やブルームバーグではコメントが多数引用されるなど、メディアでの情報発信も積極的に行う。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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