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日経平均株価が4万円台を回復した理由
田中 純平
2024/07/04

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概要

日経平均株価が3カ月ぶりに4万円台を回復した背後には、現地6月27日に行われた米大統領選のテレビ討論会の影響が大きい。なぜ、テレビ討論会の結果が日経平均株価を押し上げるきっかけになったのか?この一連の波及経路を深堀りする。



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日経平均株価はおよそ3カ月ぶりに4万円台を回復

7月2日(火)の日経平均株価(終値)は前日比1.12%高の40,074円69銭となり、約3カ月ぶりに4万円台を回復する展開となった(図表1)。米ドル高・円安が日本株上昇に寄与しないと言われて久しい中、なぜ日経平均株価は再び4万円台まで回復したのか?そのカギを握るのは10年国債利回りの上昇だ。

そもそものきっかけは、米大統領選のテレビ討論会にある。現地6月27日(木)に行われた討論会の結果は、すでに多数のメディアが報じているように、米共和党のドナルド・トランプ前大統領の圧勝だった。米民主党のジョー・バイデン大統領は終始精彩を欠き、かねてから指摘されていた高齢による不安を露呈する形となった。

この討論会後に行われた米大統領候補者の支持率調査では、トランプ氏がバイデン氏に対してさらにリードを広げる結果となった(図表2)。今年11月5日(火)の米大統領選まで約4カ月もあるため、両候補者の支持率が今後大きく変わる可能性はあるものの、金融市場は早くもトランプ氏再選の可能性を織り込み始めている。それが端的に表れているのが日米の10年国債利回りの上昇だ。

米10年国債利回りはテレビ討論会後に4.4%台をつけた

米10年国債利回りは米大統領選のテレビ討論会後に4.4%台まで上昇した。市場関係者がトランプ氏再選の可能性が高まったと判断して米国の財政赤字拡大を警戒、米10年国債を売却したことがその要因として挙げられる。また、米10年国債利回りの上昇に連動して、日本の10年国債利回りも上昇する展開となった(図表3)。

なぜトランプ氏再選の可能性が市場関係者に財政赤字拡大の警戒を促すのか?米超党派のシンクタンク「責任ある連邦予算委員会」(Committee for a Responsible Federal Budget)によれば、トランプ前大統領が任期中に打ち出した政策による政府債務の増加額は10年間で約8.4兆ドルと試算される一方、バイデン現大統領の場合は10年間で約4.3兆ドルにとどまる(図表4)。前例にならえば、トランプ氏の方が財政負担が増えると予想するのは自然な流れだろう。

風が吹けば桶屋が儲かる?

一般的に長期金利が上昇すると銀行株のパフォーマンスは向上する傾向にある。日本の10年国債利回りとTOPIX銀行業指数のパフォーマンスを比較すれば、この傾向は足元の相場にも当てはまることが分かる(図表5)。この銀行株の上昇が、TOPIXおよび日経平均株価を押し上げる材料になったと考えられる。

一連の流れを整理すると、米大統領選のテレビ討論会の結果、①トランプ氏の再選の可能性が高まり米10年国債利回りが上昇、②それに連動して日本の10年国債利回りが上昇、③日本の10年国債利回りの上昇を好感して銀行株が上昇しTOPIXを押し上げ、④TOPIXの上昇によって日経平均株価も連れ高の展開となり4万円台を回復させた、となる。「風が吹けば桶屋が儲かる」とはいかないまでも、大方の予想に反して日本株がその恩恵を受けた可能性は高い。


田中 純平
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系運用会社に入社後、主に世界株式を対象としたファンドのアクティブ・ファンドマネージャーとして約14年間運用に従事。北米株式部門でリッパー・ファンド・アワードの受賞歴を誇る。ピクテ入社後はストラテジストとして、主に世界株式市場の投資戦略などを担当。ピクテのハウス・ビューを策定するピクテ・ストラテジー・ユニット(PSU)の参加メンバー。2019年より日経CNBC「朝エクスプレス」に出演。2023年より週刊エコノミスト「THE MARKET」に連載。日本経済新聞ではコメントが多数引用されるなど、メディアでの情報発信も積極的に行う。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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