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- 米中小型株の復活か?ラッセル2000vsナスダック100
2024年7月11日(木)は、ラッセル2000指数とナスダック100指数の日次株価騰落率が極端に逆の動きを示す稀な現象が発生した。この背景には何があるのか?過去の歴史的な転換点を振り返りながら、米中小型株の復活の可能性について探る。
米長期金利の低下がラッセル2000買い/ナスダック100売りを誘発
2024年7月11日の米国株式市場は歴史的な1日となった。きっかけは同日に発表された6月の米消費者物価指数(CPI)だ。6月の総合CPIは前年同月比で+3.0%(市場予想は+3.1%)、コアCPIは+3.3%(市場予想は+3.4%)となり、いずれも市場予想を下回った。また、ここ数カ月続いていたディスインフレ傾向が継続していることも確認された。
これを受けて、米国株式市場ではこれまでパフォーマンスが好調だったナスダック100指数を売却し、パフォーマンスが低迷していたラッセル2000指数を買い付ける投資行動が鮮明になった(※ナスダック100指数は前日比2.24%安、ラッセル2000指数は同3.57%高と真逆の値動き)。
この背景には米長期金利の低下が挙げられる。一般的にラッセル2000指数を構成する中小型株は負債比率が高く、フリー・キャッシュフローも潤沢ではない。反対にナスダック100指数を構成する情報技術(IT)株などは負債比率が低く、フリー・キャッシュフローも潤沢だ。6月米CPIが発表された直後に米10年国債利回りが一時的に4.2%を割り込む展開となったことから、米長期金利の低下による恩恵を受けやすい中小型株へ投資家の関心が移った可能性がある。
5σ(シグマ)イベントが発生
ラッセル2000指数とナスダック100指数の日次株価騰落率の差は、過去30年平均でマイナス0.03%、標準偏差は1.10%だった。したがって、7月11日の株価騰落率の差は5σ(シグマ、標準偏差)に達し、非常に稀な現象が起こったことになる。
このような極端な株価騰落率の差が表れた時期は、主に2000年、2002年、2008年、2020年に集中しており、ITバブル崩壊、ワールドコム破綻、リーマンショック、新型コロナショックといったリスクイベント時に発生している(図表1)。
これらは興味深い現象だが、リスクイベントが直接的な原因であると考えるよりも、投資家の偏ったポジショニングがリスクイベントを契機に解消された結果と解釈するほうが自然だろう。
極端な株価騰落率差が発生した後の相対パフォーマンスを検証
今回のような極端な株価騰落率差が発生した後の相対パフォーマンス(ラッセル2000指数÷ナスダック100指数)を遡って検証すると、トレンド転換を示唆するケースが多かったことが分かる。
2000年11月8日のITバブル崩壊時は、それまでパフォーマンスが優位だったナスダック100指数が低迷し、反対にラッセル2000指数のパフォーマンスが優位になり始める転換点だった(図表2)。ただし、2000年4月17日の後には大きな変化は見られず、横ばいだったことから、必ずしも転換点を示唆するシグナルになっていないことも同時に分かる。
ワールドコム破綻直後の2002年7月25日も転換点を示唆していた(図表3)。ただし、この時は相対パフォーマンスの優位性がラッセル2000指数からナスダック100指数へ転換するタイミングだった。しかし、この直前の2002年5月8日時点で、すでにトレンドが転換する「前兆」が起こっていたとも解釈できる。
リーマンショック後の2008年10月8~9日時点は、明確にトレンドの転換点が見て取れる(図表4)。それまで相対パフォーマンスが優位だったラッセル2000指数は、このシグナルを契機にナスダック100指数に対して劣後する展開となった。
最後は、新型コロナショック時の2020年3月18日だ(図表5)。この時は相対的に劣後していたラッセル2000指数のパフォーマンスが下げ止まり始めたタイミングで、その後の2020年11月9日を契機に再びラッセル2000指数が優位になる展開となった。
改めて直近の相対パフォーマンスを見ると、ラッセル2000指数がナスダック100指数に対して大きく劣後している状況が見て取れる(図表6)。今回の5σイベントの発生が相対パフォーマンスの転換を示唆するものと断定はできないが、市場参加者が中小型株への資金シフトを再考するきっかけになった可能性は十分ある。
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