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- なぜ米10年国債利回りは急上昇したのか?
米10年国債利回りは10月29-30日に一時4.3%台をつけるなど、10月に入ってから急上昇している。当レポートでは、堅調な米雇用統計に加えて、11月5日の米大統領選で共和党のトランプ氏が勝利し、連邦議会選でも上下両院で共和党が過半数を確保する「レッド・ウェーブ(赤い波)」の可能性が高まっていることが、その背景にあると分析する。
米10年国債利回りは足元で急上昇
米10年国債利回りは今月に入ってから上昇基調となっている。10月29-30日には取引時間中に一時4.3%台をつけるなど、9月17日につけた3.5%台からわずか1カ月強でおよそ0.8%ポイント上昇した(図表1)。
9月17-18日のFOMC(米連邦公開市場委員会)で0.5%の利下げ開始が決定され、FOMCメンバーの予想(中央値)では2026年末にかけて2.875%までの利下げが示される中、なぜこの短期間で米国の長期金利は急上昇したのか?
トレンド転換のきっかけは9月米雇用統計
米10年国債利回りの推移を見る限り、これまでの低下トレンドから上昇トレンドへ転換したきっかけは、10月4日に発表された9月の米雇用統計だ。9月の米非農業部門雇用者数は前月比25.4万人増と市場予想の同15.0万人増を大幅に上回ったほか、過去2カ月についても計7.2万人分が上昇修正された(図表2)。
これに対し、8月2日に発表された7月米雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月比11.4万人増と市場予想の同17.5万人増(過去2カ月は2.9万人分が下方修正)を大幅に下回っており、状況は対照的だ。
底堅い雇用統計は米GDPの予測値にも表れている。9月の米雇用統計が反映されたNY連銀米GDPナウキャストは、24年7-9月期で前期比年率+3.0%前後で推移していた(図表3)。10月30日に発表された実績値の24年7-9月期米実質GDP成長率も、前期比年率+2.8%だった。一時は景気後退入りも危ぶまれていたが、足元の予測値を見る限り、景気の見通しは堅調そのものだ。
「レッド・ウェーブ」の確率が急上昇
米10年国債利回りの上昇にさらに拍車をかけているのが、共和党のトランプ氏が勝利し、上下両院も共和党が過半数を確保する「レッド・ウェーブ(赤の波)」の確率上昇だ(図表4)。賭けサイトのポリマーケットでは、米大統領選と連邦議会選で共和党が全勝するシナリオが10月から急上昇しており、ちょうど米10年国債利回りの上昇とも重なっていることが分かる。
市場が警戒するのは、トランプ氏が打ち出す財政拡張的な政策だ。同氏は自身が大統領任期中の2017年に成立させたトランプ減税(The Tax Cuts and Jobs Act of 2017)を延長・修正する構えだ。CRFB(責任ある連邦予算委員会)の試算によれば、この政策だけで政府債務の増加額が10年間で約5.4兆ドル増加すると見込まれており、その他の歳入・歳出を合わせると計7.5兆ドルの債務増加になるとされている(いずれも中央推定値)。これはハリス氏の3.5兆ドルの債務増加と比較してもかなり大きい(図表5)。
トランプ減税の延長・修正には、トランプ氏の判断だけでなく連邦議会の承認が必要だ。その可能性が「レッド・ウェーブ」の確率上昇で高まっている。政府債務が急増することになれば、米国債の信認が幾分低下することが想定されるため、米国債が売られている(=金利が上昇している)とも解釈できる。米国債は「トランプ・トレード」として取引されている可能性は十分あるだろう。
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