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中国人民元と米中通商協議
梅澤 利文
2019/05/08

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概要

楽観的な見方が支配的であった米中通商協議ですが、報道では中国が産業補助金などを巡って態度を硬化、交渉の先行きに暗雲が漂っています。トランプ大統領の警告以降、市場の反応を見ると株式市場は下落、小幅な人民元安が見られました。現段階は9~10日の米中閣僚級通商協議の結果待ちとなっています。



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米中通商協議:協議の進展遅いとトランプ大統領、中国製品への関税引き上げを警告

トランプ米大統領が2019年5月5日、中国からの輸入品2000億ドル相当に対する関税率を現行の10%から25%へと引き上げる考えをツイッターへの投稿で示してから、米中通商協議の先行きに不安が高まっています。

最終段階と目されている9日から10日の米中通商協議開始を前に中国に警告を発した格好です。通商協議の先行き懸念を受け、市場では人民元安(図表1参照)や、株安が見られました。

 

 

どこに注目すべきか:米中通商協議、人民元、外貨準備高、9日

楽観的な見方が支配的であった米中通商協議ですが、報道では中国が産業補助金などを巡って態度を硬化、交渉の先行きに暗雲が漂っています。トランプ大統領の警告以降、市場の反応を見ると株式市場は下落、小幅な人民元安が見られました。現段階は9~10日の米中閣僚級通商協議の結果待ちとなっています。

人民元の過去1年の推移を見ると、米中通商問題の影響を受けています。最初に人民元の動向を振り返ります。

まず、18年中頃から人民元安が進行しました。トランプ政権は中国からの輸入分に対する関税引き上げ(第1弾)を18年春頃には示唆していました。しかし、6月に関税品目500億ドルのリストを公表したことから貿易戦争が本格化し、中国景気への懸念に伴い人民元安が進行しました。

なお、中国の外貨準備高の動きを見ると足元安定的です(図表2参照)。15~16年の頃の人民元安の時期に外貨準備高が急減していた当時とは対応に違いが見られます。

18年後半も、トランプ政権が2000億ドル相当の中国輸入分に対する関税を25%に引き上げる構えであったこともあり、緩やかながら人民元安傾向が続きました。

ただし、1ドル=7人民元という節目が、政治的な思惑から意識されたことや、18年12月の習近平氏とトランプ大統領の間の米中首脳会談で交渉中の関税引き上げ見送りで合意し、25%への引き上げは見送られたことから、人民元高に転じる動きとなりました。

 次に、足元の人民元の動向を見ると、楽観的であった想定に反し米中通商協議が難航している様子から再び人民元安となっています。

ただ、よく見ると4月の中頃から人民元安に向かっていました。これは中国当局が中小企業向けに借入コスト引き下げや融資拡大を目指す方針を表明した時期と重なります。この頃のトランプ大統領のコメントは「通商協議はうまく行っている」というトーンでした。

現段階の市場の大方の認識は、米国が10日からの関税引き上げを表明したことは、通商協議が深刻な局面であると見られる一方で、①協議を9~10日に設定したことで、少なくとも9日に交渉の余地が残されたこと、②中国の劉鶴副首相が予定通り訪米することから何らかの妥協案(そうでなければキャンセルしていた?)の可能性に希望をつないでいると見られます。市場はある程度協議決裂のリスクを織り込むも、何らかの妥協を期待して9日を待つ姿勢と見られます。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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