- Article Title
- 中国GDP成長率、出足は良いが不安は山積み
中国の1-3月期GDP成長率は前年同期比5.4%増で市場予想を上回り、成長目標の5%を超えた。輸出が急増し、内需も堅調だが、持続性には疑問がある。今後の輸出は駆け込み輸出の反動と、貿易戦争による関税引き上げが懸念される。個人消費や工業生産も概ね堅調ながら財政政策の下支えに依存している面もある。不動産問題の解決も道半ばであり、中長期的には財政負担への懸念も残る。
中国の1-3月期のGDP成長率は堅調で、月次データとも整合的だった
中国国家統計局が4月16日に発表した1-3月期のGDP(国内総生産)成長率は、物価の変動を調整した実質で前年同期比5.4%増と、市場予想の5.2%増を上回り、堅調と見られた24年10-12月期の5.4%増の伸びと並んだ(図表1参照)。中国政府は25年の成長率目標を「5%前後」としたが、1-3月期の成長率はこれを上回る水準だった。
同日(16日)には、中国の主要経済指標である小売売上高、工業生産、固定資産投資の3月分が発表され、おおむね堅調な内容であった。また、4月14日に発表された中国の3月の貿易統計では、輸出が前年同月比で12.4%増と、市場予想の4.6%増を大幅に上回った(図表2参照)。
中国の3月の輸出は、おそらく、駆け込みで急回復した
中国の1-3月期のGDP成長率は25年の成長目標を数字の上では上回り順調な滑りだしに見えるが、内容からは達成が困難なことも想定される。
1-3月期GDPの主な押し上げ要因は外需では堅調な輸出で、内需では底堅い消費と工業生産であった。しかし、これらの要因は今後の成長要因として持続性に疑問があるうえ、貿易戦争に目を奪われがちだが、不動産問題解決は道半ばで、依然景気回復の足かせ要因となっている。
3月の貿易統計で輸出は急増した。年初来の輸出の伸びは5.8%であったことから、3月の伸びが突出していたことがわかる。関税前の駆け込み輸出であったと考えられるが、この反動減は4-6月期以降に起こることが想定される。
輸出が減少する最大の懸念は米国が中国からの輸入に課す関税だ。同税率を貿易加重平均でみると2月月初までは約20%だったが、4月10日にはホワイトハウスが追加関税の累計は145%程度になると表明した。この影響は4-6月期以降の成長率の押し下げ要因になると思われる。
ただし、押し下げの程度は中国から米国への輸出がどの程度停止するかなどに影響されよう。中国の米国への迂回輸出が可能なのかなども現時点では想定し難く、今後の展開を見る必要がある。
消費や生産活動には財政の下支えが求められるが、拡大には注意も必要
次に内需として生産活動を見ると、3月の工業生産は前年同月比7.7%増と、市場予想の5.9%増を上回り堅調だった(図表3参照)。工業生産の年初来の伸びは6.5%増であったことから、3月に生産活動が活発化したわけだが、堅調だった3月の輸出が生産活動を押し上げた1要因のようだ。
品目別では、自動車は高い伸びを維持したが、けん引役は電気自動車(EV)など新エネルギー車だった。3月は前年同月比40.6%増と高水準の伸びを維持した。新エネルギー車は年初来(1-3月)の伸びも45.4%増で、中国当局の買い替え促進対象(最近対象が拡大された)であることが生産の高い伸びを維持させていることがうかがえる。
内需の柱である消費を小売売上高でみると、3月は前年同月比5.9%増と、市場予想の4.3%増を大幅に上回った(図表4参照)。
飲食店の収入を反映する「食料」は5.6%増と、昨年後半のペース(前年同月比でおおむね3%前後)を上回った。一般に外食は景気のバロメーターで消費活動は堅調のようだが、日用品などの売り上げは伸び悩んでいる。「食料」の数字だけで消費活動を判断するべきではないと考えている。
「電気機器」、「通信用品」など高い伸びを示している項目は中国当局が今年も補助金を続けている影響が大きいようだ。例えば、前年同月比が28.6%増となった「通信機器」に含まれるスマートフォンについて、当局は6000元以下のスマホに対し15%程度の補助金を提供し、買い替えを促進するなどして消費を支えた。なお、宝石等が伸びたのは金需要を反映したもので、景気回復のサインとは考えにくい。やはり、消費の下支えには、今年も財政政策による支援が求められそうだ。
注意したい点もある。格付け会社フィッチ・レーティングスは4月3日に中国の格付けをA+からAに格下げした。貿易戦争による財政悪化懸念が背景だ。関税の陰に隠れがちだが、中国の不動産問題の解決は道半ばで、政府のテコ入れも必要だ。目先はよいとして、財政政策の無秩序な拡大がないのかに目を光らせる必要もありそうだ。
当資料をご利用にあたっての注意事項等
●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。