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- アジアの輸出国が直面する現実
米中通商交渉の動向が世界経済を左右させる展開となっています。米国も無傷でない一方、中国経済への影響が懸念されます。ただ、両国の貿易が経済に占める割合は相対的に低く、影響は比較的小幅と見られます。他のアジアの国では、堅調な成長を維持する国がある一方、タイやシンガポールなど貿易依存度の高い国は米中通商交渉の影響が大きいと見ています。
タイ、シンガポール経済成長率:貿易依存度の高い国の成長率、低下傾向続く
タイ国家経済社会開発庁(NESDC)が2019年5月21日に発表した1-3月期のGDP(国内総生産)は前年同期比で2.8%と、市場予想(2.8%)と一致し、昨年10-12月期の3.6%(改定値)を下回りました(図表1参照)。
シンガポールの1-3月期のGDP成長率は1.2%と、速報値(1.3%)、市場予想(1.4%)、昨年10-12月期(1.3%)を下回りました。
どこに注目すべきか:米中通商協議、小国開放経済、再輸出
米中通商交渉の動向が世界経済を左右させる展開となっています。米国も無傷でない一方、中国経済への影響が懸念されます。ただ、両国の貿易が経済に占める割合は相対的に低く、影響は比較的小幅と見られます。他のアジアの国では、堅調な成長を維持する国がある一方、タイやシンガポールなど貿易依存度の高い国(小国開放経済)は米中通商交渉の影響が大きいと見ています。
小国開放経済としてタイ経済の動向を見ると、輸出が不振であったことなどを背景に、昨年年初頃からGDP成長率は低下傾向です。輸出不振の背景として、米中貿易摩擦の影響と、世界的なIT関連貿易の低迷によるパソコン、同部品や半導体などが振るわなかったことがあげられます。
なお、タイ中央銀行は昨年12月に米国の利上げに合わせる格好で政策金利を0.25%引き上げ1.75%としましたが、その後据え置いています。
シンガポールも貿易面からマイナスの影響を受けていると見られます。1-3月期GDP成長率は前年同期比で、1.2%と低調でした。ただ、前期比年率の成長率は3.8%と、前期比では回復しています。もっとも、成長の構成項目を見ると建設などに偏重している点と、純輸出が不振である点は気がかりです。
シンガポールの輸出構造を見ると、アジアの貿易ハブである中継ぎ貿易で発展してきたことを反映して、再輸出が概ね半分となっています。石油精製による輸出も2割弱あり、中間的な貿易が大半となっています(図表2参照)。
なお、金額ではこれらの貿易が大半ながら、付加価値の観点では半導体や電子製品など非石油製品輸出の重要性が高まっています。
シンガポール政府は19年の成長率を従来の1.5~3.5%から1.5~2.5%へ範囲を縮小(引き下げ)しています。理由を見ても貿易の回復への懸念と、世界的な電子部品市場の回復を慎重に評価しています。
同様の懸念は、アジアでは韓国、台湾などに見られます。
一方で、同じアジアでもインドネシアの成長率は5%前後と高水準で推移しています。比較的分散化された経済構造を持つ中、貿易面でのマイナスを、旺盛な投資などでカバーしているためと見られます。その他の主な国では、内需の下支えのあるインド、利下げ余地が生じたフィリピンの成長が今後、底堅く推移すると見ています。
アジア経済は概ね堅調な推移を想定していますが、小国開放経済の動向には注意が必要と見ています。
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