- Article Title
- メキシコ中銀、意外にも全会一致は崩れたが
主な新興国が利下げの構えを見せる中、メキシコ中銀は相対的に金融緩和に慎重な姿勢を維持しています。前年比で1%台に低下した成長率だけを捉えれば、利下げが自然と見られます。しかし、内外の不確実性が通貨安、インフレ率上昇懸念を強める可能性もあることから、当面はメキシコ中銀は慎重姿勢を維持する可能性もあると見ています。
メキシコ中央銀行:4会合連続で政策金利据え置くも、全会一致は崩れる
メキシコ銀行(中央銀行)は2019年6月27日に金融政策決定会合を開催し、市場予想通り、政策金利を8.25%で据え置きました(図表1参照)。据え置きは4会合連続です。
なお、5人の金融政策決定会合メンバーのうち1人は利下げを主張しました。
どこに注目すべきか:新興国、利下げ、インフレ目標、ペソ、格下げ
主な新興国が利下げの構えを見せる中、メキシコ中銀は相対的に金融緩和に慎重な姿勢を維持しています。前年比で1%台に低下した成長率だけを捉えれば、利下げが自然と見られます。しかし、内外の不確実性が通貨安、インフレ率上昇懸念を強める可能性もあることから、当面はメキシコ中銀は慎重姿勢を維持する可能性もあると見ています。
新興国全体で見ると、インフレ率は比較的落ち着いており、ピクテの計算では新興国の平均インフレ率は足元、2.7%程度と見ています。
一方、米中貿易戦争の経済成長への影響は新興国全般に及ぶと見込んでいます。また、新興国の金融政策に影響力の大きい米国の年内利下げの公算も高まっています。そのため、主な新興国は既に利下げに舵を切っています。
例えば、インド、フィリピンや、チリ、ロシアなどが政策金利を引き下げています(図表1参照)。足元据え置きを維持しているブラジルや、年内据え置きとなっている南アフリカも、国内事情が安定するならば、利下げに転じる可能性もあると見ています。
一方、メキシコ中銀は利下げに慎重姿勢です。背景として、インフレ率が依然メキシコ中銀の上限での推移となっていることです(図表2参照)。メキシコの5月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で4.3%でした。メキシコ中銀のインフレ目標は中心値が3%で上限は4.3%です。しかし、上限並びに下限は普通、中心値の±1%に設定されることが多く、「実感」としては上限を上回っている印象です。ただ、前月比で見たコアCPIには低下が見られ、動向が注目されます。
メキシコのインフレ率を左右する通貨ペソにも不安定要因があります。米国の通商政策による不確実性は全般に景気下押し要因ですが、米国と地理的に関係の深いメキシコは、不法移民への対応が通貨安を伴うこともあり、利下げを慎重にさせる要因となっています。
国内事情による格付け懸念が根強く残ります。国営石油会社の支援による財政負担の増加に改善の切り札は見出しにくい状況です。
そうした中、今回のメキシコの金融政策決定会合の据え置きが全会一致とならず、利下げ支持の声があがったのは市場でもややサプライズでした。しかしながら、インフレ率の動向を考慮すると、利下げが過半数となるにはもう少し時間が必要と思われます。メキシコは利下げするとしても他の新興国に遅れての参入となる可能性もあると見ています。
当資料をご利用にあたっての注意事項等
●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。