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- メキシコに相次ぐ格下げの理由
メキシコはこの1ヵ月ほどの間に主な格付け会社3社から格下げされました。新型コロナウイルスと原油価格の下落で新興国の格下げが続いていますが、3社からの格下げとなると、他の国ではアルゼンチンやエクアドルなどしか思いつきません。このような背景を受け、メキシコの通貨ペソは下落傾向で信用力も悪化しています。
メキシコ格付け:過去1ヵ月の間に、3大格付け会社が揃って格下げ
ムーディーズ・インベスターズ・サービス(ムーディーズ)は2020年4月17日にメキシコの長期債格付け(自国通貨建て、外貨建て共に)をA3(A-に相当)からBaa1(BBB+に相当)に格下げしました。見通しは弱含み(ネガティブ)です。
なお、メキシコの格付けについては、フィッチ・レーティングス(フィッチ)が4月15日にBBBからBBB-に、S&Pグローバル・レーティング(S&P)も3月26日に自国通貨建て長期債格付けをA-からBBB+に格下げするなどしています。
どこに注目すべきか:メキシコ格下げ、自動車生産、ジャンク債
メキシコはこの1ヵ月ほどの間に主な格付け会社3社から格下げされました。新型コロナウイルスと原油価格の下落で新興国の格下げが続いていますが、3社からの格下げとなると、他の国ではアルゼンチンやエクアドルなどしか思いつきません。このような背景を受け、メキシコの通貨ペソは下落傾向で信用力も悪化しています(図表1参照)。格下げの要因として次の点が指摘されています。
まず、新型コロナウイルスの影響です。特にメキシコの場合、主力産業である自動車生産に影響が見られ始め、3月の自動車生産は前年同月比でマイナス24.6%でした。フィッチはさらなる悪化を見込んでいます。
なお、メキシコの感染者数は世界保健機関(WHO)によると、足元7千人弱ですが、メキシコの百万人あたりの検査を受けた人の数は160人程度と、以前当レポートで検査の少なさを指摘したブラジルの260人程度をさらに下回っておりメキシコの感染拡大の実態は不透明です。
次に原油価格下落の影響です。メキシコは大半の歳入を石油に依存する中東やアフリカの産油国とは異なります。それでも、国営石油会社(ぺメックス)支援の財政負担が重くなっています。なお、ムーディーズはぺメックスの社債格付けをBa2(BBに相当)へ2段階引き下げ投資不適格としました。ムーディーズはメキシコ政府の財政負担が対GDP(国内総生産)比で2%程度が22年迄毎年必要と見込んでいます。
S&Pやムーディーズが指摘するのがメキシコの中期的な経済成長率の見通しが悪化したことです(図表2参照)。例えば、ムーディーズが14年にメキシコをA格に引き上げたとき、構造改革などへの期待から潜在成長率は3%程度を見込んでいましたが、(恐らくコロナウイルスがある程度落ち着く)21年から23年にかけて成長予想は良くて2%と見ています。原因は現政権の一貫性の無い政策によりビジネスマインドが萎縮したためと指摘しています。例えば、18年10月に唐突にメキシコシティ空港の建設を中止したこと、再生可能エネルギーや天然ガスパイプライン建設でも、民間企業の役割が不明確としたため投資は敬遠されました。最近では、既に建設が開始されていたビール工場のプロジェクトが中止されています。投資家の信頼回復は容易でないと見込まれています。
メキシコの格付けはフィッチのBBB-が最も低くなっていますが、フィッチは見通しを安定的としており、南アフリカのような投資不適格債となる懸念は低いと思われます。ただ債務残高は警戒水準に近づいており、信頼回復が求められます。
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