Article Title
豪中銀の景気認識、慎重ながらやや楽観的なトーン
梅澤 利文
2020/07/08

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー


概要

豪中銀の金融政策については予想通りです。ただ、声明に示された豪中銀の豪経済に対する認識は、他の国際機関や中欧銀行に比べて、比較的楽観的でした。足元の経済指標の落ち着き、もしくは悪化が思っていたほどではなかったことが背景と見られます。ただ、豪経済には気がかりな点もあり、金融緩和姿勢は当面維持されそうです。



Article Body Text

オーストラリア準備銀行:市場予想通り政策金利を据え置き、当面の据え置きも示唆

オーストラリア(豪)準備銀行(RBA;中央銀行)は2020年7月7日に政策金利の誘導目標を市場予想通り、過去最低の0.25%に据え置くことを決定しました。

また、3年国債の利回り目標(0.25%、イールドカーブコントロール)を維持することも決定しました。なお、声明で債券の購入について(目標レートの維持に)、必要であれば購入を継続する方針であるものの、最近は国債利回りが目標近くで推移しており、債券購入を控えていることを示唆しました。

また今後の金融政策の方針について、完全雇用に向けた進展が見られることと、インフレ率が2~3%の目標バンドの範囲内で持続的に推移すると確信が持てるまで、政策金利を引き上げない方針を維持しました。

 

 

どこに注目すべきか:豪中銀、声明、雇用市場、失業者、感染拡大

豪中銀の金融政策については予想通りです。ただ、声明に示された豪中銀の豪経済に対する認識は、他の国際機関や中欧銀行に比べて、比較的楽観的でした。足元の経済指標の落ち着き、もしくは悪化が思っていたほどではなかったことが背景と見られます。ただ、豪経済には気がかりな点もあり、金融緩和姿勢は当面維持されそうです。

今月の豪中銀の声明を前月と比べると、景気に対して若干、楽観的なニュアンスがうかがえます。例えば、世界経済について前回(6月2日)の声明文では世界経済は深刻な景気後退に直面している、という表現でした。

しかし、今回の世界経済についての表現は景気後退をしてきたという表現に変更しています。また、声明の後半では豪経済について、当初想定していた程にはひどくない、といった表現も見られます。

豪中銀は8月に公表予定の金融安定報告で経済成長率を公表しますが、20年の成長率は、前回のマイナス6%から上方修正する可能性も考えられます。最近の経済指標を見ると、6月の豪総合購買担当者景気指数(PMI)は52.7と景気回復の目安の50を超えています(図表1参照)。

最近、国際通貨基金(IMF)や経済開発協力機構(OECD)が成長率予想を下方修正したこととは反対の認識です。もっとも、株式市場の堅調さを目にする市場関係者からすれば、豪中銀の認識の方がなじみやすいかもしれません。

しかし、あくまで、想定ほど悪くなかったというだけで、豪中銀も国内経済について深い懸念も示しています。

もっとも懸念を示している分野のひとつが雇用です。5月の失業率は7.1%と急上昇しました(図表1参照)。声明でも3月から80万人が職を失ったことを指摘しています。

なお、声明に言及されていませんが、オーストラリアでは新型コロナウイルスの感染者が再び増加傾向です(図表2参照)。オーストラリア第2の都市メルボルン周辺で感染が拡大しビクトリア州では6週間の都市封鎖が発表されています。

感染収束が早かった分、景気回復も期待される豪経済ですが、不確実な面も多々あり、当面金融緩和が続きそうです。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

手数料およびリスクについてはこちら



関連記事


メキシコペソの四苦八苦

10月の中国経済指標にみる課題と今後の注目点

米CPI、インフレ再加速懸念は杞憂だったようだが

注目の全人代常務委員会の財政政策の論点整理

11月FOMC、パウエル議長の会見で今後を占う

米大統領選・議会選挙とグローバル市場の反応