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インドネシア、国債引受の本格化を注意深く進める
梅澤 利文
2020/07/10

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概要

インドネシア中銀が保有する国債は200兆ルピア程度です。そのうち、発行市場から直接買い入れた国債(引受)は約30兆ルピア強で、流通市場からの購入が170兆ルピア弱です。今回インドネシア中銀が合意した引受額の約400兆ルピアは本格的な引受に踏み出した規模と見られます。ただ、用意周到な準備から、通貨ルピアや国債利回りに目立った動きは見られません。



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インドネシア中銀:国債直接引き受け、注意深く進める

インドネシアのスリ・ムルヤニ財務相とインドネシア中銀のペリー・ワリジョ総裁は2020年7月6日、新型コロナウイルスの対策として拡大する財政赤字の負担について中銀と政府で分担することで合意しました。

合意によると、新型コロナウイルス対策として約900兆ルピア(約6兆6400億円)を調達するうち、インドネシア中銀が約400兆ルピアを直接引き受けるとしています(図表1参照)。

 

 

どこに注目すべきか:国債保有、政令、国債引受、政策金利

インドネシア中銀が保有する国債は200兆ルピア程度です。そのうち、発行市場から直接買い入れた国債(引受)は約30兆ルピア強で、流通市場からの購入が170兆ルピア弱です。今回インドネシア中銀が合意した引受額の約400兆ルピアは本格的な引受に踏み出した規模と見られます。ただ、用意周到な準備から、通貨ルピアや国債利回りに目立った動きは見られません(図表2参照)。

まず、簡単にインドネシア中銀の国債引受の経緯を振り返ります。今年3月末にジョコ大統領は政令で時限的にインドネシアの財政赤字上限を超える財政拡大の容認や、中銀の国債直接購入(引受)を認めました。4月にインドネシア中銀は引受を(小額ながら)開始しました。6月末にインドネシアの財務省と中銀が拡大する財政赤字負担の分担について協議していることを発表、今回全容が明らかとなりました。

今回の追加財政の約900兆ルピアは対GDP(国内総生産)比で6%弱に相当し、インドネシア中銀の直接引受分は同約2.5%です。決して小さな額ではありませんが、市場の反応は主に次の理由により、限定的であったと見ています。

中央銀行の国債引受は、普通はタブーですが、導入が発表されてからある程度時間が経過する中で、長所(メリット)への理解が進んだからと思われます。

メリットの中で大切なのは、時限的な引き受けにとどめることを明確にしている点です。そもそも3月末の政令でも時限的であるとされている上、今回拡大された引受は20年予算、つまりコロナ対策に限定すると理解されています。

また、インドネシア中銀が引受けた国債は、通常の国債同様に流通市場で取引可能で、市場オペレーションなどに活用される見込みで、透明性は確保される模様です。

財政政策にもメリットが期待されます。これは、なぜ引受が選択されたかの理由のひとつでもあると見られますが、調達コストが政策金利と同じで、安く調達できる見込みだからです。

では、弱点や懸念は無いのでしょうか?今まで述べてきたメリットが懸念に変わる可能性があります。政策金利で調達できるならば、この制度を1回限りでなく、今後も続けたいという声が、政治サイドからあがる可能性はゼロではないでしょう。将来の話ではありますが、中央銀行の独立性を脅かす動きには、目を光らせる必要がありそうです。インドネシア中銀は通貨安を防ぐ運営をすることから市場の信頼もあると見ていますが、その信用を傷つける動きが無いか注視が必要です。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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