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- 補完的レバレッジ比率の緩和措置終了の顛末
補完的レバレッジ比率(SLR)という耳慣れない言葉が米国債市場の下落(利回りは上昇)要因として最近クローズアップされてきました。米国大手銀行にSLRの算出で分母に求められていた保有米国債と準備預金を計算から除外することを認めていた条件緩和措置を終了することにしました。これにより懸念される米国債市場への影響は、ある程度抑制されつつあるようです。
補完的レバレッジ比率:利回り上昇が懸念される中、予定通り条件緩和措置を終了
米連邦準備制度理事会(FRB)は2021年3月19日に声明で米大手銀行に対する資本面の優遇策である「補完的レバレッジ比率(SLR)」の条件緩和措置を、3月31日で終了することを表明しました。
市場では金融システムと利回りが上昇傾向となっている米国債市場(図表1参照)に与える影響軽減のため期限の延長を期待していましたが、FRBは、予定通り(そもそも1年の予定)終了することを発表しました。
どこに注目すべきか:補完的レバレッジ比率、資本比率、緩和措置
補完的レバレッジ比率(SLR)という耳慣れない言葉が米国債市場の下落(利回りは上昇)要因として最近クローズアップされてきました。米国大手銀行にSLRの算出で分母に求められていた保有米国債と準備預金を計算から除外することを認めていた緩和措置を終了することにしました。これにより懸念される国債市場への影響はある程度抑制されつつあるようです。
まず、補完的レバレッジ比率(SLR)について簡単に整理します。SLRは普通株式や内部留保からなる中核的資本をエクスポージャー額(貸出や国債を含む保有有価証券、デリバティブ等で構成)で割った比率というイメージです。
なお、自己資本比率では分母の資産にリスクウェイトを乗じます。そのため米国債などの影響は考慮されませんが、SLRは銀行などが無理にバランスシートを拡大させていないかをチェックする比率であるため、国債などの額が算出に用いられます。これはリーマンショックで見られた過大な融資などへの反省から適正なレバレッジに収まっているかを把握する尺度として導入されています。
当局は米国の大手銀行にSLRが5%以上となるように求めています。これと国債市場との関係ですが、SLRは分母に国債を含んでいるため、SLRを下げないためには国債の保有にブレーキがかかる按配です。
しかし、昨年春の新型コロナウイルスによる市場の混乱から、国債保有を促すためにSLRを1年の期限付きで(21年3月末迄)、国債と準備預金をSLRの計算から除外することが認められました。この効果は大きく、米大手銀行は規制緩和から最近まで国債の保有を増やし、数千億ドル規模でバランスシートを拡大させてきたといわれています。
しかし金融秩序を重視する民主党左派から、SLR条件緩和停止が求められたこともありFRBは打ち切りを表明しました。
米国国債の1日あたりの取引高が約6千億ドル程度とし、SLR条件緩和措置で購入した国債がこれに迫るとすれば、同措置終了で国債市場に悪影響があるとの懸念はもっともです。
しかしながら、同措置の終了を発表してからの米国債利回りは、欧州のコロナ感染再拡大という懸念が大きいのかもしれませんが、むしろ低下傾向です。背景として市場ではある程度の準備は行っていたと見られます。例えば、プライマリーディーラーはポジションを軽くして備えていたといった報道などが散見されます。
また、当局の配慮も見逃せません。同措置の終了に伴い、FRBは今回、とりあえず同措置を一時的に終了する一方で、SLRのルール変更を行う可能性があることも同時に発表しています。今後パブリックコメントなどを踏まえ変更を考慮する運びと見られます。変更の背景は、SLRの条件緩和措置が市場で機能していたことを踏まえると、何らかの条件緩和措置を含んだ修正になるとの期待や観測が市場に見られます。
なお、別の視点から考えると、今回の決定は金融政策の正常化を段階的に進める一環なのかもしれません。いつかは起きる債券購入の縮小など重要な変更の前に措置を積み上げて、ショックを分散する思惑もあるのかもしれません。
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