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- 中国経済指標、回復の中に課題も残る
今日のヘッドライン2021年5月14日号で5月前半に公表された中国の経済指標を紹介し、中国当局の方針として、穏健、安定的な成長を目指していることを紹介しました。今回月半ばに公表される主要経済指標を重ね合わせると、個人消費を主体とした安定的な成長をゴールとするならば、軌道へのシフトは道半ばと思われます。
中国経済統計:4月の小売売上高は市場予想を下回るも、生産と投資が成長を底上げ
中国国家統計局が2021年5月17日に発表した4月の中国月次経済指標では小売売上高が前年同月比+17.7%と市場予想の同+25.0%を下回リました(図表1参照)。
一方、鉱工業生産は前年比+9.8%と市場予想の+10.0%にほぼ並びました。しかし堅調な輸出に支えられ、引き続き高い伸びとなっています。また、固定資産投資は年初来前年比で+19.9%とほぼ市場予想の+20.0%に並びました。
どこに注目すべきか:穏健、安定的、生産、投資、小売売上、物価
今日のヘッドライン2021年5月14日号で5月前半に公表された中国の経済指標を紹介し、中国当局の方針として、穏健、安定的な成長を目指していることを紹介しました。今回月半ばに公表される主要経済指標を重ね合わせると、個人消費を主体とした安定的な成長をゴールとするならば、軌道へのシフトは道半ばと思われます。
中国は月半ばに消費、生産、投資の動向を示唆する経済指標として、それぞれ小売売上高、鉱工業生産、固定資産投資の前年比データが公表されます。
なお、今年の前年比データは、有名(?)となったベース効果で水準が過大となる傾向があります。そこで19年との比較や、市場予想との比較などで優劣を判断することが必要です。そこで市場予想との比較で見ると、鉱工業生産と固定資産投資は市場予想にほぼ並んだ一方で、小売売上高は出遅れました。中国の4月の成長は生産と投資にけん引された一方、消費の回復は鈍かったと見られます。
生産はベース効果を超え、特需といえる好調な輸出がけん引役と見ています。また根強い需要の半導体やロボットなど、中国の産業政策強化に関連する分野は堅調です。
固定資産投資は国営企業による投資の伸びを投資全体の6割程度を占めるといわれる民間企業の投資が上回りました。建設や固定資産購入を示す固定資産投資は全般に底堅かったと見ています。
一方、不動産投資は年初来前年比で21.6%と市場予想(20.0%)を上回り堅調でした。この背景に引き続き堅調な住宅投資がありそうです(図表2参照)。ただ、中国当局が住宅融資抑制策などを公表しており、今後の頭打ちが想定されます。
生産も、輸出の減速が想定されることから、今後の中国の成長は生産や投資でなく、消費主導の成長へのシフトに期待がかかります。ただ4月の小売売上高は期待を下回りました。背景は先月の消費が強すぎた反動に加え、雇用の回復の遅れなどが考えられます。なお雇用に関しては失業率は低下傾向で、今後は徐々に消費の下支えとなることも想定されます。
ただ、気になるのは消費の格差です。住宅価格の上昇などを受けた資産効果で富裕層の消費は比較的堅調な一方、富裕層以外の消費は鈍いようです。仮に物価上昇などが加われば消費は鈍る可能性もあります。なお、中国の4月のインフレ率は前年比0.9%でしたが、これは食品価格が昨年に比べ大幅に下落した効果が大きいと見られます。一方、中国の生産者物価は既に高水準で消費者物価への波及が懸念されます。当局は消費者物価への波及は限定的と説明していますが、今後の展開に不透明な面も残ります。経済格差を解消しながら、インフレにも配慮した政策運営には課題も多そうです。
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