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- 変異株に見舞われたインド、金融政策の選択
インドは変異ウイルスへの感染が4月頃から急拡大し、深刻な感染状況に見舞われました。インド中銀の前回の金融政策決定会合は4月7日であったので、今回は実質的に感染拡大後、初の会合と見られます。インドはインフレ率上昇にも懸念が残ることから、まずは金融緩和姿勢を維持し、景気回復を最優先させたと見ています。
インド準備銀行:インド型変異ウイルスで景気悪化が懸念される中、政策金利を据置き
インド準備銀行(中央銀行)は2021年6月4日、市場予想通り政策金利のレポ金利を過去最低の4%に据え置くと決定したことを公表しました。政策金利の据え置きは6会合連続となります。
インドは今年4月頃から新型コロナウイルスへの感染第2波が急拡大しました(図表2参照)。景気回復が後退するリスクに直面する中、インド中銀はインフレ率上昇懸念より、景気対策を優先した格好です(図表2参照)。
どこに注目すべきか:インド型変異株、感染拡大、ワクチン、据置き
インドは変異ウイルスへの感染が4月頃から急拡大し、深刻な感染状況に見舞われました。インド中銀の前回の金融政策決定会合は4月7日であったので、今回は実質的に感染拡大後、初の会合と見られます。インドはインフレ率上昇にも懸念が残ることから、まずは金融緩和姿勢を維持し、景気回復を最優先させたと見ています。
インドの最新のGDP(国内総生産)は1-3月期分が5月末に公表されました。GDP成長率は前年同期比1.6%で、市場予想(1.0%)、20年10-12月期(0.4%)を上回りました。政府支出や建設活動に支えられ、低水準ながらも回復傾向でした(図表2参照)。
しかし、1-3月期の回復は今年4月のインド型変異ウイルスへの感染急拡大前の数字です。気になるのは、感染拡大の影響です。ひとつの目安として、GDPの動向に先行する傾向が見られる総合購買担当者景気指数(PMI)を参照すると、直近の5月総合PMIは48.1と、4月の55.4から低下してはいますが、今のところPMIは昨年前半ほどの大幅な落ち込みは回避されています。
インドの新型コロナによる累計死者数は33万人を超え、米国、ブラジルに次ぐ規模です。その多くが4月以降と見られます。報道などで伝えられる医療体制の危機ひとつとっても事態は深刻です。経済への下押し圧力は当然懸念されます。一方で前向きな動きも見られます。
例えば、インドの新規感染者数は5月前半から低下傾向となっています。一方で、ワクチン接種回数は上昇傾向です。インド政府はワクチン接種を拡大する構えです。
インド型変異株への懸念は根強いですが前向きな動きも見られます。英国のイングランド公衆衛生庁は先月、インド変異株であってもファイザー製ワクチンを2回接種すると発症を88%減らす効果があったという研究結果を発表しています。
なお、インドは昨年前半に全国的なロックダウンを厳格に導入し、大幅に景気が悪化しましたが、経済制限などの厳格度合いを指数化したデータなどを見ると、昨年程は厳格でないことも、ある程度景気の支えとなる可能性が考えられます。
インドのインフレ率は4月は前年比4.3%でしたが、6月中頃に公表予定の5月分は5%台への上昇が市場では予想されています。原油高などインフレ圧力要因は根強く、いずれ対応(政策金利の引き上げ)は想定されますが、まだ先と見られます。金利スワップ市場の織り込みでも、半年から1年は先と見られます。インド中銀は政策変更は景気回復を確認してからと、歴史的低水準に政策金利を据置き金融緩和姿勢を維持しました。さらに1.6兆ルピーの追加債券購入策を導入し流動性を供給するとしています。まずは景気回復が最優先の課題で、政策変更を占うには成長率に注目する必要がありそうです。
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