Article Title
韓国利上げ継続と大統領選挙
梅澤 利文
2022/01/18

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー

概要

昨年アジアの主要国で唯一利上げを開始した韓国は、今年になっても、インフレ懸念を背景に利上げ姿勢を維持しました。当面利上げ姿勢を維持するものと見ています。なお、韓国では3月に大統領選挙が予定されています。大統領選挙の結果は日本にも影響を及ぼす可能性があり、今後の動向に注意が必要です。



Article Body Text

韓国中銀:インフレ懸念を背景に、利上げを継続し、引締めスタンスを維持

韓国銀行(中央銀行)は2022年1月14日に金融通貨委員会の結果を公表し、政策金利を0.25%引き上げ年1.25%としました(図表1参照)。韓国の利上げは21年8月、11月に続く動きです。

韓国中銀は声明でインフレへの懸念を表明するなど、タカ派(金融引締めを選好)スタンスを維持しています。韓国は景気回復が続く中、物価の上昇が続いています。韓国の21年12月の消費者物価指数(CPI)上昇率は前年同月比で3.7%と高水準での推移となっています(図表2参照)。

どこに注目すべきか:利上げ、韓国中銀、ウォン安、大統領選挙

まず、韓国の経済状況を振り返ります。韓国のGDP(国内生産)成長率は21年7-9月期が前年同期比で4.0%でした。今月終わりに発表予定の21年10-12月期の成長率も3.9%と同程度の成長が予想されています。

韓国経済の成長の原動力は主に輸出ですが、21年12月の輸出(20日間)は前年同月比20.0%とピークからの減速感は見られますが依然高水準です(図表2参照)。

韓国の輸出は台湾などと並んで世界の貿易動向の先行指標的な動きをすることから日本の投資家にも注目されています。韓国の輸出は、新型コロナウイルスの感染動向次第ながら、財からサービスへ需要のシフトが想定されることから、今後も緩やかながら減速を見込んでいます。

こうした中、韓国中銀は住宅価格高騰も含めインフレ抑制に政策の重点を置いています。韓国のインフレ率は21年12月のCPIが前年同月比3.7%と高止まりしています。韓国中銀の声明文でも、インフレ期待は高く、さらなる利上げの必要性を示唆しています。

また、通貨ウォン安もインフレ押し上げ要因です。インフレ率が高止まりしている背景を項目別で見ると、原油や農産物など輸入に依存している商品の物価高がインフレ押し上げ要因となっています。韓国中銀は昨年後半に為替市場への介入も辞さない構えでウォン安への対応を示唆していましたが、インフレへの懸念が背景にあったと見られます。

韓国は先月、新型コロナの感染再拡大に見舞われました。韓国の新型コロナ対策は厳格なPCR検査などをはじめ様々な対応で発生を押さえ込み、「K防疫」と賞賛された時期もありました。しかし、ワクチン接種後半年を経過した人々などに感染の広がりが見られました。ただ、韓国中銀は新型コロナ(現状はオミクロン株)の景気への影響は限定的との見方から引き締め姿勢を維持しています。新型コロナ感染の動きは日本もある程度参考になる面があるかもしれません。

最後に、韓国の日本への影響で気になることとして3月9日の大統領選挙について述べます。選挙は直接投票により行われ、決選投票はなく、一度の投票で最多得票の候補者が当選となります。なお、韓国の大統領の任期は一期5年で再任は認められていないため、現職の文在寅大統領は出馬しません。選挙は与党「共に民主党」の李在明(イジェミョン)前京畿道知事と、保守系最大野党「国民の力」の尹錫悦(ユンソクヨル)前検事総長との一騎打ちと見られていました。与党、最大野党の候補がともにスキャンダル続きで勢いを欠く中、中道野党「国民の党」の安哲秀(アンチョルス)代表が第3の候補として支持率を伸ばす展開です。日本から見ると、李在明候補が反日の主張を繰り返す点が気になります。一方、野党の尹錫悦候補が勝利した場合、政権交代により北朝鮮政策が現在の融和路線から見直される可能性があります。その場合、北朝鮮の出方が気になるところです。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

手数料およびリスクについてはこちら



関連記事


メキシコペソの四苦八苦

10月の中国経済指標にみる課題と今後の注目点

米CPI、インフレ再加速懸念は杞憂だったようだが

注目の全人代常務委員会の財政政策の論点整理

11月FOMC、パウエル議長の会見で今後を占う

米大統領選・議会選挙とグローバル市場の反応