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- EUはロシア産原油禁輸という追加制裁に踏み込んだが
欧州連合(EU)首脳によるロシア産原油の禁輸を含む追加制裁第6弾の骨格が固まりつつあるようです。ただ、ロシア経済の現状を見ると、資本統制など特殊事情によりルーブル高に転じています。経済制裁には息の長い対応が求められそうですが、追加制裁の交渉過程で露呈した国際社会の結束の揺らぎに対して、今一度、制裁を続ける覚悟が求められそうです。
EUミシェル大統領:ロシア産原油の一部禁輸で合意とツイート、追加制裁へ前進
欧州連合(EU)首脳はロシア産原油の一部禁輸で合意したと、EUのミシェル大統領(常任議長)は2022年5月30日にツイッターで述べています。
ミシェル大統領がツイートした内容はロシア産原油輸入の3分の2余りを即時にカバーするもので、ロシアの兵器確保に向けた膨大な資金源が断たれるとしたうえで、戦争を終わらせる上でロシアに最大の圧力になると述べています。
どこに注目すべきか:EU首脳会議、禁輸、経済制裁、利下げ、物価
EU首脳会議が31日まで開催される中、ロシアに対する追加制裁第6弾の骨格ともいえるロシア産原油の禁輸に合意したと報道されています。最終合意の内容は今後の展開を待つ必要はありますが、発動すれば、年内に90%以上輸入が止まるとされ一定の制裁効果は見込まれそうです。
しかし、合意した禁輸措置は海上輸送の石油を対象として、陸上パイプラインで運ばれる石油は一時的に例外扱いとしています。禁輸に反対するハンガリーを説得する必要などがあるためで、妥協の産物という面も見られます。
それでも、4月のロシアの石油輸出先を見るとEUは全体の4割強(国際エネルギー機関(IEA))となっており、ロシアは得意先を失う可能性が高まっています。
もっとも、ロシアの現状を見ると、これまでの国際社会のロシアに対する経済制裁の効果に多少の疑問が残る展開となっています。例えば、通貨ルーブルの回復を受けロシア中央銀行は5月26日に臨時会合(前日にアナウンス)を開催し、政策金利を14.00%から11.00%に引き下げました(図表1参照)。 約1ヵ月で3回目の利下げ実施となります。また、ロシア中銀は、追加利下げの可能性も示唆しています。
気がつけばロシアの政策金利はウクライナに軍事侵攻する前の水準である9.5%に近づいています。また、資本統制という特殊事情があるにせよ、ルーブルの水準は(使用範囲に制約があるとしても)侵攻前よりルーブル高で、ロシアの輸出業者にはルーブル安を期待する声さえあったようです。
利下げが可能となった背景にインフレ率上昇の勢いに落ち着きが見られたこともあげられます。ロシアの4月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比は17.8%上昇でした(図表2参照)。しかし、前月比は約1.6%上昇と前月の約7.6%上昇から大幅に低下しており減速感が見られます。またロシア中銀も4月時点のロシアのインフレ見通しを足元で引き下げるなど変化が見られ、政策の重心を物価対応から、景気支援にシフトさせている模様です。ロシア中銀がインフレ率見通しを引き下げたことから、さらなる利下げも想定されます。
追加制裁第6弾でEUは一部妥協があるもののロシア産原油の禁輸に合意したうえ、これまで制裁対象から除外していたロシアの銀行最大手であるズベルバンクを国際的な資金決済網「国際銀行間通信協会(SWIFT)」から排除することでも合意したと報道されています。これまでの経済制裁から一歩踏み込んだ印象です。
もっとも、経済制裁は効果が表れるのに時間がかかることも明らかとなりつつあります。抜け穴を全てふさぐのは簡単ではないからです。また追加制裁を受け原油価格が上昇したように、制裁をかけた側の負担も大きいことから、国際社会が結束をいかに保つか課題も残されています。
何よりも待たれるのは、ウクライナの人々が普通の暮らしを取り戻すことですが、その道筋は現時点では不透明です。
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