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市場予想を下回った中国4-6月期GDP成長率
梅澤 利文
2022/07/19

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概要

中国の4-6月期GDP成長率は、ゼロコロナ政策の景気への影響が深刻であることを浮き彫りとしました。今後、中国当局はゼロコロナ政策を看板としての地位は保ちつつ、景気への配慮から、感染拡大が見られた場合に、緩やかなゼロコロナ政策の実施を模索するのではとの観測があります。これまでの経済指標を見る限り、ゼロコロナ政策修正の必要性があるように思われます。



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中国4-6月期GDP成長率:市場予想、前期を下回り、ゼロコロナ政策の影響が鮮明に

中国国家統計局が2022年7月15日発表した4-6月期のGDP(国内総生産)は前年同期比0.4%増と、市場予想の1.2%増、前期の4.8%増を下回りました(図表1参照)。前期比ではマイナス2.6%減でした。

新型コロナウイルスの感染を徹底的に抑制する「ゼロコロナ」政策による経済成長へのダメージが鮮明となり、例えば、3月にロックダウンが始まった上海では、4-6月期のGDP成長率が前年同期比マイナス13.7%減となりました。

15日に発表された中国の主要経済指標では、6月の工業生産は前年同月比3.9%増と、5月の同0.7%増を上回り、6月の小売売上高は同3.1%増と、市場予想の0.3%増、5月のマイナス6.7%減を上回りました(図表2参照)。

どこに注目すべきか:中国GDP、市場予想、失業率、住宅ローン

中国の今回の主要経済指標では、小売売上高など月次データは4月の底打ちを再確認する内容でしたが、4-6月期のGDP成長率は市場予想を下回りました。オミクロン変異株の感染拡大を受けて上海などで実施されたロックダウン(都市封鎖、いわゆるゼロコロナ政策)の影響が深刻であったことがうかがえます。中国の22年年初来GDP成長率は前年比で2.9%となり、年間成長目標の5.5%を下回っています。年後半の動向を占う上でのポイントは次の通りです。

6月の小売売上高は市場予想を上回りました。ゼロコロナ政策停止が実施され消費を底上げした面はあると見られます。ただ課題も見られます。今回の小売売上高の底上げは自動車(6月は前年比13.9%、5月はマイナス16%)の購入減税効果があげられます。個人消費の回復には中国当局の景気てこ入れ策が求められる状況です。自律的な回復を見込むには失業率にも課題が残ります。都市部に限定した調査失業率は低下(改善)しましたが、若年層(16~24歳)の失業率は20%近い水準で就職難がうかがえるからです。

工業生産も前年比4%近い上昇となりましたが、乗用車の生産と最近見直されつつある石炭生産が数字の上では生産をけん引したと見られます。ここでも、生産の回復が当局の政策支援に依存していることがうかがえます。

固定資産投資は製造業と、中国当局が積極的にてこ入れしているインフラ投資に押し上げられ、年初来前年比6.1%の上昇となりました。一方で、不動産投資は住宅市場の不振などを背景に同マイナス5.4%と下落傾向が続いています。GDPなどと同日に発表された主要70都市の新築住宅価格は前月比マイナス0.1%と、昨年9月から前月比でマイナスが続いています(図表3参照)。住宅市場のデータの中には回復の兆しを示唆するものも見られますが、貸出データを見ると、住宅ローン金利の基準となる期間5年以上のローンプライムレート引き下げなど住宅市場のてこ入れ策が実施されていますが、住宅ローン需要の回復は鈍いままです。本格的な住宅市場の回復には時間が必要と見られます。


景気を押し下げた要因であるゼロコロナ政策の再開は感染動向次第と不透明な中、政策頼りでなく、民間主導の景気回復へと導くには課題が相当残されていると思われます。

 

 


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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