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インド中銀、タカ派姿勢を示す
梅澤 利文
2022/08/09

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概要

インド中銀は今回の利上げ局面が始まる前は、景気重視の傾向が見られました。しかし、利上げ路線に転じてからは、インフレ抑制を優先し、今回は0.5%と0.25%の利上げ予想が市場で拮抗する中、0.5%の利上げを決定するなどタカ派姿勢を示しました。ただ景気のソフトランディングを目指す意向も示しており、今後はデータ次第の政策運営となる可能性を見ています。




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インド準備銀行:過半の市場予想を上回る利上げで金融引き締め姿勢を示唆

インド準備銀行(中央銀行)は2022年8月5日、政策金利(レポ金利)を0.5%引き上げて5.4%にすると発表しました(図表1参照)。5月、6月の会合に続き利上げは3会合連続となります。市場では半数近くが5.25%への利上げを見込んでいました。しかし、5.4%の利上げも同程度が見込んで拮抗していました。

インド中銀は消費者物価指数(CPI)上昇率の中期目標を「2-6%」と定めていますが、足元のCPIは6月が前年同月比で7.01%と(図表2参照)、1月以降は6%を超える水準が続いています。

どこに注目すべきか:インド中銀、燃料等、インフレ目標、中立金利

インド中銀は市場予想を上回る利上げを決定したという点で、タカ派的(金融引き締め政策を選好)な姿勢を示しました。足元ではインフレへの対応を優先しました。米連邦準備制度理事会(FRB)が7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で今後の政策運営はデータ次第と述べたことなどを受け、市場はこれをハト派的(金融緩和を選好)と受け止めたようですが、多くの中央銀行は、ハト派に転じることなく、足元はインフレ抑制の姿勢を維持しているように見られます。

まず、インドの消費者物価指数を振り返ります。6月のCPIは前年比で7%を超えていましたが、4月の約7.8%から低下しています。7月分は8月12日公表予定ですが、市場では6.8%程度への低下を見込んでいます。

インドのCPIの主な構成項目の動きをみると、大幅に上昇していた燃料等はすでにピークアウトしたようにも見えます。もっとも燃料等は変動が大きい項目なだけに先行きに警戒感を持つことが必要です。また、CPIに占める構成割合が36%超と影響力が大きい食料・飲料は依然高水準ですが、4月頃がピークとなる可能性もありそうです。

もっとも、インドのインフレ率はインド中銀の物価目標(2-6%)の上限を上回っており、インド中銀がインフレ抑制の手を緩めず、今回0.5%の利上げを選択したことは適切な判断であったと見ています。なお、インド中銀のインフレ予想を確認すると22/23年度(22年4月~23年3月)は6.7%で、前回の会合(6月)時点の予想(6.7%)を据え置きました。インド中銀はインフレが緩やかな低下に留まると見込んでいるようです。なお、経済成長率についてインド中銀は22/23年度が前年比で7.2%の成長と見込んでおり、これも6月の見方を維持しました。インド中銀はかねてよりソフトランディングを目指すとしています。今回の利上げでも、景気を押し下げるとまでは考えていないようにも感じられます。

ただし、インド中銀の今後の政策方針には読み切れない部分があります。インド中銀は景気やインフレを熱しも冷ましもしない「中立金利」の水準を明確にしていません。また、中立金利に至る過程として、利上げを続けるとしても、物価目標の上限である6%を下回れば、とりあえずOKとするハト派路線なのか、それとも厳格にインフレ率を4%にまで引き下げるタカ派路線なのかは、単に選択肢を示すにとどめています。

インド中銀は6月の会合で来年度(23/24年度)のインフレ率は4%半ばから5%半ばに低下すると見込んでいました。ただ、インドのインフレ率は対外要因や気候などで大きく変動する傾向もあります。今回のインド中銀の景気見通しなどから、今後タカ派度合いを緩めることは想定されますが、目先は物価の低下を確認することが優先されると思われます。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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