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- ニュージーランド、利上げは続くが
ニュージーランド準備銀行(中央銀行)は昨年10月の利上げ開始から合計2.75%と利上げ幅では米国などを上回るペースです。今回の声明文でも利上げのピークを引き上げるなどタカ派姿勢を打ち出しています。また次回の会合でも同様のペースでの利上げを示唆しています。ただし、データ次第ながら、微妙に終着点を意識させる表現も見られました。
ニュージーランド準備銀行:市場予想通りの利上げながら、声明文のトーンはタカ派
ニュージーランド(NZ)準備銀行(中央銀行)は2022年8月17日の金融政策決定会合で、政策金利を0.5%引き上げて3.0%とすることを決定しました。市場では大半が0.5%の利上げを予想していました。なお、0.5%の利上げは4会合連続となります(図表1参照)。
NZ中銀は声明で5月以降に国内のインフレ圧力が高まったとの認識で一致し、政策金利引き上げのタイミングを前倒しすることで合意したと説明しています。
どこに注目すべきか:NZ中銀、前倒し、トリム平均、賃金スパイラル
先進国の中で比較的早期に利上げを開始したNZ中銀は利上げを更に前倒しする姿勢を示しました。具体的には、政策金利の見通しとして、22年末時点で3.69%となった後、23年4-6月期に4.1%でピークに達するとの予想を示しました。従来は(5月時点)23年7-9月期に3.95%がピークと想定していたことから、NZ中銀は政策金利のピークの見通しを前倒ししたうえ、水準も上方修正しています。
また、NZ中銀は次回(10月)の利上げ幅も同様のペースとする考えを声明文に示しており、次回も0.5%の利上げが見込まれます。
NZ中銀はインフレ率が高過ぎることを利上げの理由としています。NZの4-6月期消費者物価指数(CPI)は前年同期比で7.3%と、NZ中銀のインフレ目標(1~3%)を大幅に超えています。また、変動の大きい品目を除外して算出するトリム平均(コアCPIに相当)は前期比で1.8%と過去に比べて高水準で(図表2参照)、NZ中銀も懸念を示しています。
NZ中銀は雇用市場の強さにも懸念を表明しています。例えば失業率は4-6月期が3.3%と低水準です。労働力不足を反映して、賃金も上昇し、インフレがスパイラル的に加速することも懸念されます(図表3参照)。
なお、声明文によると、NZ中銀は中立金利(インフレを加速も減速もさせない金利水準)が従来の想定より高い可能性などを検討した模様です。仮に高いと判断すれば、政策金利の水準を更に引き上げることも考えられますが、結論は今後の議論を待つ展開と思われます。
NZ中銀のタカ派(金融引き締めを選好)的な姿勢を受け、会合結果の公表直後、市場ではNZドル高、NZ国債利回りの上昇が見られました。しかしながら、持続性は限られ、概ね公表前の水準に戻っています。
会見でNZ中銀のオア総裁は、インフレへの懸念を示しながらも、政策金利が4%となれば明らかに中立金利を上回ると述べるなど、利上げの必要性を強調しつつも、空を見上げるほど利上げの頂上が高くないことも示唆しています。
NZ中銀は次回の会合でも今回同様のペースでの利上げを示唆し、需要の鈍化が労働市場の熱気を冷やすと述べるなど、インフレ抑制を優先させるタカ派姿勢を示しました。ただ、景気に対して一定の配慮も見え隠れするなど、今の時期における市場との対話の難しさも浮き彫りとなっています。
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