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- ブラジル、一足先に据え置きの気配だが
連続利上げで高金利政策を続けるブラジル中銀に変化の兆しがあります。ブラジルのインフレ率が低下傾向だからです。ただ政策対応による管理価格主導のインフレ率低下である点は気がかりです。なお、ブラジルは大統領選挙を目前に控えながら、政治動向を反映しやすい通貨レアルが比較的落ち着いている点も据え置きの支援材料ですが、政治動向に安心は禁物です。
ブラジル:インフレに落ち着きの兆しで、連続利上げに終止符の可能性も
ブラジル地理統計院が2022年9月9日に発表した8月の消費者物価指数(IPCA)は前年同月比で8.73%上昇と、前月の10.07%を下回りました(図表1参照)。原油価格の下落、商品流通サービス税(ICMS)の税率引き下げがインフレ率低下の主な背景と見られます。
ブラジル中央銀行は9月20~21日に金融政策決定会合を開催することを予定しています。前回(8月)の会合で、政策金利を0.5%引き上げて13.75%としました。これで利上げは12会合連続となりました。市場では9月の会合で、ブラジル中銀は政策金利を据え置く可能性があると見ています。
どこに注目すべきか:ブラジル中銀、IPCA、インフレ見通し、レアル
今週の注目イベントは米連邦公開市場委員会(FOMC)ですが、世界の多くの中銀もFOMCの開催に合わせるように、自国の金融政策会合を設定しています。ブラジル中銀もそのうちの1つですが、大半の他の中銀には利上げが予想されています。一方ブラジル中銀について、市場の一部に利上げを見込む声もありますが、大多数は据え置きを予想しています。
ブラジル中銀が据え置くと見込む理由はインフレ率の低下と既に政策金利が高水準となっていることが挙げられます。
ブラジルのインフレ率の低下はグラフ上でも明らかです。物価の落ち着きにより、政策金利はインフレ率を5%程度上回る水準です。ブラジル中銀は21年3月に利上げを開始するなど対応が早かった分、今年になって利上げを開始した欧米などとは事情が異なります。また、利上げ幅を見ても、昨年後半には1回の会合で1.5%も引き上げていた時期もありましたが、徐々に利上げ幅を縮小させており、「そろそろ感」も出やすくなっている時期と思われます。
もっとも、インフレ率の低下に慎重な見方もあります。インフレ率の低下はエネルギー価格や食料品価格の「自然な」落ち着きという面が足元で見られますが、減税や一部エネルギー価格の押し下げなど政策対応主導によるインフレ率低下という面もあり、例えば、輸送費用が前月比で大幅に低下したのは政策対応の影響と思われます。一方で、衣服、ヘルスケアなど幅広い項目に価格上昇が見られる点は気がかりです。
なお、ブラジル中銀の22年末のインフレ見通しは6.8%で、物価上昇の減速傾向を見込むも、物価目標(3.5%±1.5%)の上限5%を上回る水準です。仮に9月の会合で政策金利を据え置くとしても、利下げは先と見られます。
ブラジル中銀の据え置きを支持する別の要因はレアルの安定です(図表2参照)。高金利、底堅い経済成長に加え、懸念されていた大統領選挙前の変動が、安心には程遠いながら、これまでのところ落ち着きが見受けられます。
ブラジルの4-6月期実質GDP(国内総生産)成長率は前年同期比3.2%と市場予想を上回り、高金利下でもプラスを確保しました。背景として、ボルソナロ政権による現金給付策による個人消費の押し上げなど疑問の残る面はありますが、一方、ブラジル中銀は、コロナ禍からの回復過程における雇用市場の堅調さを指摘するなどプラス面も見られます。
なお、ブラジル中銀は先に示したインフレ見通しの前提として1ドル=5.3レアルと現状近辺での推移を想定しています。ブラジルは10月に大統領選挙を控えていますが、世論調査ではボルソナロ大統領に対して左派のルラ候補がリードを拡大している模様です。そのような中、足元では、投資家から安定性で評価されているメイレレス元財務相がルラ候補の支持を正式に表明したことで、選挙戦の落ち着きを期待して今週レアル高に転じています。選挙の動向次第ながら、仮にレアル安定ならば引き締めの緩和要因と思われます。
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