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インド中銀、当面は引き締め姿勢とその後の展開
梅澤 利文
2022/10/03

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概要

インド中銀は9月末の金融政策決定会合で0.5%の利上げを決定し、インフレ抑制姿勢を示しました。国内需要はこれまでのところ比較的堅調ですが、利上げは徐々に景気の下押し圧力になると思われます。今回の会合での0.5%の利上げは全会一致とならず、小幅の利上げを支持する委員もいました。今は少数派ですが、今後の展開には注意が必要です。




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インド中銀:市場予想通り0.5%の引き上げであったが、全会一致とならず

インド準備銀行(中央銀行)は2022年9月30日、政策金利(RBIレポ金利)を市場予想通り0.5%引き上げて5.9%にすると発表しました(図表1参照)。インド中銀は22年度(22年4月~23年3月)の実質GDP(国内総生産)成長率の見通しを従来の7.2%から7.0%に下方修正しました(図表2参照)。一方、22年度の消費者物価指数(CPI)の見通しは6.7%で、前回会合と同水準を維持しました(図表3参照)。

なお、今回の0.5%の利上げでは、6人の委員のうち1人は0.35%の利上げを支持し、全会一致で同幅の利上げが支持された前回(8月)会合とは、この点で異なりました。

どこに注目すべきか:インド中銀、経済見通し、輸入物価、通貨安

インド中銀は5月に臨時の会合を開催して0.4%の利上げを決定した後、6月、8月、そして今回の9月の会合では0.5%の利上げを決定し、インフレ対応姿勢を示してきました。足元のインフレ率は前年比7.0%と、依然、インド中銀のインフレ目標の上限(6%)を超えていることから、物価上昇への対応を優先することは当然のように思われます。ただ、今回の利上げが全会一致とならなったことに示されるように、まだ先のことながら、徐々に景気に配慮する政策運営に転じると思われます。

インド中銀の目先の最優先の政策運営の目標は通貨安とインフレの抑制とみられます。米国の金融引き締めを背景に、インドを含め新興国からの資本流出が拡大しています。この動きを抑制するため高金利政策が求められます。

インドの貿易収支にもルピー安の影響が見られます。インドの8月の輸出は前年比で1.6%増にとどまる一方で、同月の輸入は37.3%増と高水準です。エネルギーを輸入に依存するインドではエネルギー価格の上昇が輸入増の主な背景ですが、通貨安も輸入を押し上げたと見られます。原油価格は6月をピークに下落傾向となっていますが、インド中銀は22年度のインフレ見通しを前回と同水準で維持しており、物価上昇への警戒姿勢を緩めていないことがうかがえます。特にルピー安に落ち着きが見られない中で手を緩めるわけにはいかない、という事情があるように思われます。

政策運営の難しさはインド中銀の会見や経済予想に表れていると筆者は見ています。インド中銀の経済予想では、インフレ率については市場とインド中銀の予想はほぼ同水準です。しかし、23年度の成長率についてインド中銀は6.5%と、市場よりも若干高い成長率を予想しています。足元では、金利上昇の影響からインドの成長率見通しをさらに引き下げる動きも見られますが、うがった見方をすれば、あえて高めの成長率予想を維持しているような印象さえ感じます。


インド中銀は22年度内に2回(22年12月と23年2月)金融政策決定会合を予定しています。米国も当面は利上げが見込まれることから、インド中銀も利上げペースを落としながら政策金利の引き上げを続ける可能性がありそうです。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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