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- ブラジル大統領決選投票、接戦で終盤に向かう公算
ブラジルは10月の大統領選挙を前に波乱も想定されていましたが、選挙戦も終盤に近づく中、比較的落ち着きを維持しています。懸念されていたバラマキ政策の公約がエスカレートする展開は抑えられています。もっとも、選挙戦の展開や、どちらかの候補が選ばれた後の政策運営などには不透明要因も残り、今後の動向に注意は必要です。
ブラジル大統領選挙:決選投票を目前に控え、両候補の支持率が接近
ブラジルのルラ元大統領と現職ボルソナロ大統領の一騎打ちとなるブラジル大統領選決選投票は2022年10月30日に実施が予定されています。世論調査会社ダッタフォリャが19日公表した最新の調査によると、ルラ元大統領の現職ボルソナロ大統領に対する支持率のリードが、4%に縮小し、統計上は互角に近づいたと報道されています。
19日に公表された調査では、ルラ氏の支持率が49%、ボルソナロ氏が45%で、その5日前49%対44%から差が縮まりました。なお、調査の誤差は2%です。為替市場では世論調査でボルソナロ大統領への支持が高まるとレアルが上昇する傾向がみられます(図表1参照)。
どこに注目すべきか:レアル、インフレ率、財政政策、大統領選挙
主な新興国通貨の過去1年の動きをみると、対ドルで上昇している通貨は、事実上の管理通貨となっているロシアルーブルを除けば、ブラジルレアルやメキシコペソなど限られた通貨となっています。米国の金融引き締めの影響などによるドル高が新興国通貨安に波及しています。
そうした中、ブラジルレアルは高水準の政策金利、堅調な経済ファンダメンタルズ、そして懸念されていたブラジル大統領選挙中に目立った波乱要因がないことなどを背景に底堅い展開となっています。
ブラジルは政策金利を、8月の金融政策会合で13.75%に引き上げました。インフレ率を大幅に上回る水準です(図表2参照)。名目でも実質ベースでも高水準なことから、金利収入の点でレアルは買われやすい面もあるように思われます。
なお、ブラジルのインフレ率低下の背景にはインフレの原因となっていた食料品や電力価格の落ち着きや、レアルが比較的安定的に推移したことなどが挙げられます。また、インフレ指標の構成をみると運輸サービスや通信費などが低下要因とみられます。もっとも、運輸サービスはガソリン価格の下落が背景とみられます。これはボルソナロ大統領が国営石油会社の人事に介入するという腕づくによる面も見られます。
ブラジル経済は、コロナの感染収束や、低所得者向け支出支援(財政拡大政策)などを受け底堅く推移していることも(財政拡大は懸念ながら)レアルの安定要因と思われます。
レアルの動向で想定外であったのは大統領選挙による波乱が限定的なことです。支持率でリードする左派のルラ元大統領は農業ビジネス企業を支持基盤とする元サンパウロ州知事を副大統領候補に擁立したことで、ルラ候補が意外と市場寄りの政策運営をするのではとの期待も見られます。
一方、ボルソナロ大統領は日本でも、お笑い番組のネタとなるほど奇抜な発言や行動が目立ちます。しかし、国営企業の民営化や、年金税制改革など右派らしい政策も実施しています。また、ブラジル中央銀行の高水準の政策金利に表立って批判することもなく、金融政策の独立性を重視しているようです。ボルソナロ大統領への支持が上がるとレアルが上昇するのも市場寄りの姿勢を評価してのことと思われます。左派のルラ候補と、思いもよらぬ政策を採用するボルソナロ大統領が公約でバラマキ政策の競い合いをするのではとの選挙戦前の懸念は後退する一方で、どちらに転んでもそれなりに運営されるのでは、という淡い期待もレアルを下支えしているように思えます。ただしどちらの候補となった場合でも、波乱要因は残されていると見られそうです。
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