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- ユーロ圏の物価に変化の兆しだが
エネルギー価格の上昇によりユーロ圏のインフレ率は上昇してきましたが、エネルギー価格が足元で落ち着いてきたことを受け、ピークアウトの兆しも見られます。もっとも、エネルギー価格の先行きには不確実性もあります。また、ユーロ圏の基調的な物価はじりじりと上昇しており、欧州中央銀行(ECB)は当面金融引き締め姿勢を、少なくとも前面に押し出すと思われます。
ドイツ消費者物価指数:スペイン、ベルギーなどのインフレ指数と共に低下
ドイツ連邦統計庁が2022年11月29日に発表した11月の独消費者物価指数(CPI)は、欧州連合(EU)基準で前年同月比11.3%上昇と、市場予想に一致し、前月の11.6%上昇を下回りました(図表1参照)。
同日に発表されたスペイン、ベルギーのCPIでもインフレ減速が確認されました。なお、11月のユーロ圏消費者物価指数(HICP、以後CPI)は30日に発表される予定です。
どこに注目すべきか:ドイツ、HICP、ピークアウト、ユーロ安、基調
天然ガスなどエネルギー価格の伸び鈍化などを受け(図表2参照)、独インフレ率や、同じユーロ圏のスペイン、ベルギーの11月のインフレ率に減速感が見られました。11月のユーロ圏全体のCPIは30日に発表予定ですが、経済規模が最大のドイツのインフレ率との連動性などから、同指数は10月の前年比10.6%上昇を下回ることも予想されます。
すでに発表されているドイツ、ベルギー、スペインの11月のCPIが低下した主な背景として、天然ガスや原油などエネルギー価格の落ち着きが挙げられます。例えば、CPIに先行する傾向がある生産者物価指数(PPI)はエネルギー価格の影響をより直接的に反映しますが、10月の独PPIは前年比34.5%と、前月の45.8%から急落しています。また、前年のエネルギー価格が高かったスペインは9月頃からのエネルギー価格下落などを反映してCPIが低下しています。
市場の反応は、30日に発表される11月のユーロ圏CPIを待つ姿勢が優勢ながら、インフレのピークアウト観測を背景に小幅ながらユーロ圏国債利回りは低下しました。市場における政策金利の予想を見ても、欧州中央銀行(ECB)の12月の政策理事会での利上げ幅について0.5%に(0.75%から)縮小
させるとの予想が若干確信度合いを深めてはいるようです。
ユーロ圏全体の11月のインフレ指標を待つという面もあるのでしょうが、ECBが次の点から容易に引き締め姿勢を緩めることはないとの判断もあると見られます。
まず、単純にインフレ率の水準が高過ぎることです。インフレ目標の2%近辺との乖離は大きいと見られます。
次に、短期的な傾向を反映する前月比(図表1参照)を見ると市場がインフレ低下を見込みすぎた6月の水準と同様です。持続的な低下の確認が必要と思われます。
より懸念されるのは通貨ユーロの動向です(図表2参照)。ユーロは底打ちしたに過ぎず、緩和姿勢を示せば、再びユーロ安、パリティ(1ユーロ=1ドル)割れも懸念され、ユーロ安により、インフレ圧力が高まる恐れがあります。
ECBのデギンドス副総裁は昨日、物価上昇を抑え込むためどの程度の政策引き締めが必要かを判断する上で、基調的なインフレを注視し続ける必要があると指摘しています。これは着実に上昇を続けるコアCPI (図表3参照)を今後は注目すべきということを示唆したと思われます。エネルギー価格による変動よりも、価格基調により注意が必要です。
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