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- 中国、発表待ちの経済指標を補う
中国は春節休暇の関係で2月に主要経済指標が通常公表されません。しかし、今年はゼロコロナ政策解除後ということもあり、その動向が気になるところです。そこで、金融指標や人の移動データなどを振り返り、景気動向を占うと、おおむね順調な回復が想定されます。もっとも、回復の持続性には課題も残されており、今後の当局のさじ加減に注目が必要と見ています。
IEAはゼロコロナ政策の解除などを受け石油需要見通しを上方修正
国際エネルギー機関(IEA)は2023年2月15日に公表した月報で、1-3月期の世界の石油需要予想を日量50万バレル引き上げました。中国が厳格な新型コロナウイルスを封じ込めるゼロコロナ政策を解除し、経済再開に軸足を移したことが背景と説明しています。なお、IEAは今年の世界の石油消費は日量で200万バレル増えて、平均で日量1億190万バレルになると見込んでいます。
中国の石油製油所はゼロコロナ政策解除の動きを受け、石油需要の増加を見込んでいる模様です。そのため国有製油所は設備稼働率を引き上げて、想定される石油需要への対応を進めていることがデータからうかがえます(図表1参照)。
1月の経済動向を占うと、堅調な回復が想定される
中国では春節などの影響もあり、2月に小売売上高や固定資産投資などの主要経済指標が公表されません。ゼロコロナ政策解除後の経済動向が見えにくくなっています。そこで、金融指標やリアルタイムデータなどで中国の足元の経済状況を確認すると、中国景気は回復傾向にあるようです。
まず、金融面を確認すると、中国社会全体の資金調達状況を示唆する社会融資規模は5.98兆元増加しました(図表2参照)。借り入れを示す新規融資額は4.9兆元と昨年1月に記録した過去最大の3.98兆元を超えました。企業の借り入れ意欲が旺盛であったことが背景です。通常中国では、1月に春節休暇が重なり資金需要は高まる傾向があります。しかし、過去に比べても、資金需要が強いことから、足元の景気回復期待の強さがうかがえます。
次に、人の移動を主な都市(北京、上海、深セン)における地下鉄利用客数で振り返ると、ゼロコロナ政策解除後、急速に回復しています(図表3参照)。なお、1月に利用客数が急激に落ち込んでいますが、これは春節休暇(23年は1月21日~27日)の影響と見られます。
中国民用航空局によると、今年の春節において国内航空機の利用客数は延べ9億人で、昨年対比で約8割増と大幅な伸びが報告されています。これは、新型コロナ感染が広がる前の19年と比べて概ね7割にまで回復した計算です。
1月や2月の個人消費(小売売上高)は3月中頃の発表を待つ必要があります。ただし、中国小売売上高を週単位で算出する小売ナウキャストを見ると、23年1月の小売売上高は前月の前年比マイナス0.5%減から、プラスに転じることが見込まれます。
本格的な回復のカギを握るのは不動産市場の動向
欧米などで、コロナ禍の買い控えなどで生み出された過剰貯蓄は消費を下支えしました。中国にも相当額の過剰貯蓄が見込まれています。ゼロコロナ政策解除による消費押し上げが見込まれます。
一方、中国の過剰貯蓄には不動産投資を手控えた分も含まれると見られ、本格的な景気回復には不動産市場の回復が求められます。
中国の不動産市場が悪化したのは不動産市場の引き締め政策が主な要因です。中国は政策が極端から極端に振れることも多く、先を読むことは難しいですが、規制は緩和の方向と見られます。例えば、中国人民銀行(中央銀行)は昨年11月に不動産市場に金融支援策を行い、今年1月には不動産市場を悪化させた主な要因とみられる「3つのレッドライン」(不動産会社に課された財務指針)の緩和をアナウンスしました。
なお、中国国家統計局が発表した1月の主要70都市の住宅価格指数は前月比で横ばいと、これまでのマイナス続きから持ち直しの兆しも見せています。
もっとも、中国不動産市場の問題は根深いとみており、問題解決を期待するのは時期尚早と思われます。
経済再開を受け、中国の経済見通しを上方修正しましたが、さらなる調整については、来月開催される全国人民代表大会(全人代)の発表内容に注目する必要があると考えます。
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