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米経済の強弱が示された消費者信頼感指数
梅澤 利文
2023/03/01

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概要

米調査会社コンファレンス・ボードが発表した2月の米消費者信頼感指数は、足元の堅調な経済指標と、先行きに対する懸念を反映する結果となりました。2月に公表された米経済指標は主にサービス業主導の回復で、モノ消費の回復は概ね鈍いままです。サービス業の強さを背景に金融引き締めを強めれば消費者マインドが悪化する懸念は同調査でもうかがえ、金融当局には絶妙な対応が求められます。




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米コンファレンス・ボード2月の消費者信頼感指数は予想外に悪化

米調査会社コンファレンス・ボードが2023年2月28日に発表した2月の米消費者信頼感指数は、102.9と、市場予想の108.5、前月の106.0を下回りました(図表1参照)。市場では最近の米国経済指標の改善もあり前月を上回ることが予想されていましたが、結果は反対となりました。

内訳をみると、足元の景況感を示す現況指数の2月分は152.8と前月の151.1を上回りました。一方で今後半年程度の見通しを反映する期待指数の2月分は69.7と、前月の76.0を下回りました。消費者は先行きに悲観的であることが浮き彫りとなりました。なお今回の消費者信頼感指数調査のデータ集計期限は2月23日となっています。

現況指数は雇用市場を反映して堅調ながら、期待指数は悪化

2月の米消費者信頼感指数は全体的にはやや弱い数字でした。2月に公表された米国の他の経済指標が概ね堅調な景気回復を示したことに比べ違和感のある印象です。ただし、内容を見ると、足元の景況感を示す現況指数は底堅い動きとなっています。これを支えたのは足元の雇用市場の強さと見られます。同調査の中で「雇用は十分」から「職探しが困難」の動きをみると、職を探すことは足元で比較的容易と見られます(図表2参照)。米労働省による米雇用統計で1月の失業率は3.4%と、米労働市場の強さが示されたことと整合的です。

一方で、2月の期待指数は69.7と前月を下回りました。足元の堅調さとは異なり、先行きに不安を抱えていることが示唆されました。2月に公表された米経済指標が堅調で、インフレ鈍化のペースも鈍ったことから、金融引き締め観測が強まったのかもしれません。

なお、消費者信頼感指数を所得区分別に1月と2月を比較すると、高所得区分(図表3、所得区分が5より大きい区分)で2月が1月を下回り、信頼感指数が悪化している様子です。反対に低所得層では、1月に比べ2月が概ね改善しています。これは先の米雇用統計で、接客部門など低賃金のサービス業における雇用が大幅に増えていたことと整合的なようにも見られます。

期待指数の低下は景気後退のサインと見られるが判断は容易でない

なお、コンファレンス・ボードの期待指数が注目される理由に、同指数が80を下回ると、1年以内に景気後退となることが多いからです。同指数が80を下回ったのは昨年3月です。しかし12月には再び80を上回り、今年になって再び低下しています。80を下回って1年という経験則に従えばそろそろ景気後退ですが、米国の足元の景気動向を見れば景気後退には程遠いと思われます。景気後退の判断には同指数が明確に80を下回ることや、他の指標も悪化するなど総合的な判断が必要と思われます。

コンファレンス・ボードの調査では、自動車や家電製品などの購入予定も調査対象となっていますが、今後半年のモノ消費には慎重な姿勢がうかがえます。堅調なサービス消費の陰に隠れていますが、この消費の不釣り合いの持続性に疑問も残ります。

1月に公表された経済指標は不調、2月は好調な傾向が見られました。その中で、3月に公表される指標への注目度は高いと見ています。



梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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